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2008年9月 9日 (火)

雑誌付録のイーサネットマイコン

生来のへそ曲がりが出て(7/30/08)
 またまた、雑誌付録の基板の話である。 開発が一段落して次のプロジェクトの調査をしていたら、間が良いのか悪いのか、イーサネットコントローラ内蔵のワンチップコンピューターが特別付録の雑誌(インターフェース2008年9月号)の発売日にぶつかってしまった。電光掲示板はANKのフォントの位置の微調整も済んだし、今のところ懸案はすべて解決してやることがない。

 32ビットマイコンにFPGA基板、それにUSBマイコン(トラ技8月号これも買ってしまった)と、このところ立て続けに3つも付録基板が揃い、いずれも動作を確認しただけでその先は何もやっていない。Cで開発していると言ってもそれぞれ開発環境は作らないといけないし、アーキテクチャーは全部ばらばらなのであまり沢山の機種に手を出すと開発効率が悪くなる。

 と、迷ったのだがこれも少し癖になってしまって、欲しいと思い出すと止まらない。色々調べて行くうち、今度の付録のマイコン(MCF52233)のイーサネットは100Base/TXが動くと知ってやっぱり買うことにした。しかし、雑誌付録なので高さのあるモジュラージャックや電源ソケットなどは自前で用意しなければいけない。でもそこは良くしたもので雑誌社が部品販売店とタイアップしていて、しっかりキットを売り出すことになっている。ところが値段を見て驚いた。LANのクロスケーブルなど必要もない部品が揃ったキットが¥3000、モジュラージャック単品だけで¥800近くするのである。殆どの人はLANにハブを使っているだろうからクロスケーブルなど不要だし、秋月にはLEDまでついたパルストランス付きのジャックは\300で売っている。

 しかも念の入ったことに、秋月で売っているジャックはピンアサインが違うので使えないと明記してある。ここで生来のへそ曲がりがむくむくと起き上がった。誰がどれだけ儲けるのか知らないが、大した金にもならないだろうに、人の足元を見た姑息なやりかたに無性に腹が立ってきた。普通の人なら¥300でも¥800でも大した差ではないので文句も言わず買うだろうが、へそ曲がりにはそれが気にさわる。意地でもこの店からモジュラは買ってやるもんかと心に決めた。

 同じことを考えていたのは、私だけではなかった。見るともなくウェブを調べていたら、何と秋月の¥300のモジュラージャックをこの付録に強引につけた人のブログが見つかった。3ヶ所あるピンアサインの違いをピンを曲げてつけている。これだ。秋月のモジュラーならこのあいだプリンタ電源制御のときの予備にもうひとつ買ってある。迷っていたけれど、これで今度の付録付きの雑誌を買う立派な大義名分ができたと言うものである。

 次の日、仕事の帰り渋谷の大きな本屋に寄って雑誌を探す。ない。なにい、もう売り切れたのか。いやいや定期のところではなくカウンタの目の前に平積みで何十冊と積み上げてあった。家に帰って早速モジュラーのピン曲げに挑戦する。一回ピンアサインを間違え、いつ折れるか冷や冷やものだったが、何とかずらすことに成功した。ピンが交叉するところは、1ミリの耐熱絶縁チュープを入れてショートを防ぐ。

勇躍、電源を入れる。3Vはブレッドボード基板の3Vレギュレータからこのあいだ作った片側DCプラグで片側がピンソケットのコードが活躍する。一瞬LEDが点いたがすぐに消え、PCからのpingが通らない。このLEDはリンクステイタスなので点きっ放しにならないとおかしい。勿論telnetもつながらない。

 さあ、困った。ハブにはノードを見つけたというLEDは点いているが、このマイコンにはUARTもついておらずISPのように動作確認するインタフェースもない。今のところイーサネットがつながらなければ何も始まらないのである。ところが何度かプラグを抜き差しするうちLEDが点くところがあることがわかった。接触不良か。ぐりぐり動かしていると点きっ放しになるところもある。急いで片手でPCを操作しpingを打つと、出た!レスポンスが返って来た。あわててブラウザを立ち上げる。おお、ブラウザにも設定画面が出た。ちゃんと動いている。

 しかし、モジュラージャックは力を入れて押さえていないとちゃんと接続されない。半田付けのとき無理な力をかけてしまったかと半田を吸い取り線でとり少しずらすが変化はない。どうもピンを曲げたときに内部の結線が切れてしまった公算が高い。やれやれ、へそ曲がりが仇になってひとつモジュラジャックを駄目にしてしまった。今、もういちど秋月で¥300のジャックを買ってきてピン曲げにこだわるか、悔しいけれど¥790で指定のモジュラージャックを入手するか迷っている。

パルストランスを活用(8/1/08)804_2
 とにかく断線したモジュラジャックははずすしかない。ピンの折り曲げを一度失敗して曲げなおしている。恐らくそのときに中で切れたのだろう。まあそれは良いとして、一旦複数の箇所に半田付けで固定したパーツの取り外しは非常に難しい。専門家によると、こて先が分岐して複数の場所の半田を同時に溶かす半田ごてがあるそうだが素人が揃えられるのは溶点の低い半田で面実装の取り外しが出来る工具セットくらいのものだ。それでもなぜか人の足元を見るように¥5000近くする。まだ手が出せない。

 しかし、はずさないことには次に進めない。昔ホットナイフ用に買ってあった60Wの半田ごてがあるのを思い出した。そのときひらめいたことがある。そうだ。練習を兼ねて、このあいだMACアドレスのEEPROMを取り外した古いNIC基板にあるパルストランスをはずしてみよう。Webにはへそ曲がりの人が沢山いて、この基板の指定のモジュラジャックを使わずパルストランスをつけてつないでいる人の報告があり動作に不安はない。

 ただパルストランスは面実装でなくピンが基板の下に通っているDIPである。DIPは足が深いだけ取り外しはより難しい。まず半田吸い取り線で徹底的に半田をとる。60Wなので面白いように半田がとれるが、12ピンあるので簡単ではない。続いてドライバーなどでこじて片面を少しづつずらし浮かせていく。順調に5ミリほど上がったが最後がなかなか抜けない。そのうち熱で外側のモールドの一部が浮いてきたため、あわてて抜くのをあきらめてニッパーでピンを切る。5ミリもあれば再利用には十分だろう。

 昔なら何と言う時間の無駄遣いと言われただろうけれど、昨今なら地球に優しい資源の再利用である。パルストランスの入っていない普通のモジュラジャックは、前にサンハヤトの変換基板付きのを買ってある。パルストランスそのものの存在も知らない時に買ったもので、このあと秋月のトランス付きのモジュラージャックを使ったので引き出しに眠っていた。これも無駄にせずに済む。二重の資源活用だ。

 暫くはこのモジュラージャックとはずしたパルストランスで雑誌付録を動かそうと、いよいよ本番の断線したモジュラージャックの取り外しにかかった。いや、これが難渋したのである。60Wの半田ごては強力で固定用の大きな箇所の半田は簡単にとれたのだが、ピン部分がなかなか抜けない。ピンを曲げたために、素直に抜けていかないのだ。そのうち恐ろしいことが起きる。基板とスルーホールの銅パタンが熱で分かれ始めた。あわててニッパーでピンを一本づつ切ってジャックを分離する。モジュラージャックは後の検証のためなるべく現状のままはずしたかったのだがそんな悠長なことは言っていられない。

 どきどきしながらルーペではずれた箇所を点検する。パタンが切れたら恐らく修復はほとんど不可能になる。はずれたところは数箇所で、いずれも配線のないランドだけで他と接続しているところは次の半田付けのとき慎重にやれば何とかなりそうである。胸をなでおろした。元はと言えば¥300で買えるジャックを¥800で売ろうという商売に反発して始めた作業である。これでおしゃかにしてしまってはみっともなくて人にも話せない。

 新しいモジュラジャックとパルストランスは変換基板ごとユニバーサル基板の切れ端に固定し、6本のリード線で付録基板のピンに接続する。どうせ付録基板はブレッドボードに固定する予定でピンヘッダーを付けてしまっており問題はない。100Base/TXにならないかもしれないが今のところは10Base/Tだけで十分だ。そのうち安いモジュラーがどこかで売り出されたとき付け替えよう。恐る恐る基板の電源を入れる。

点いた!リンク確立のLEDが点灯した。pingもTelnetも全く問題なく動作する。いやいや、おつかれさま。何度も繰り返すが、苦労が多ければ多い程、解決の喜びは大きい。はたからみれば愚かなこと限りないが、こんな上質な楽しみはない。たとえ失敗しても、誰かが悲しむわけでも、人に迷惑をかけるわけでもないのである。

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