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2009年3月の3件の記事

2009年3月31日 (火)

その後のSDカードPCMプレーヤーと機能追加

ケースに入れてみる(3/25/09)
 卒業式に出る袴姿の娘を早稲田まで車で送る。学校近くは大渋滞だ。冷たい雨が降って卒業式には生憎の天気。送ったついでに届け物のため都心へ足を延ばす。5・10(ごっとう)日とあってどこも車で一杯だ。秋葉原を素通りする。珍しいこともあるものだ。

 家に戻って、ケースの工作にいそしむ。このケースはカーボネート樹脂で工作がとても楽だ。アクリルのように割れる心配がないし、結構強い。ミニルーターでLCDの表示面を切り取る。ミニルーターの削り粉は床に落ちてこないくらい微小すぎて少し心配である。まあ、しょっちゅうやるわけではないが、今度はマスクをしてやろう。

 電源スイッチは迷ったが、結局レガシーなスライドスイッチを横につける。タクトスイッチの長押しで電源を入れるのが最近の流行だが、ソフトの構造を大幅に変える必要がある上、待機電流が少しでも流れるというのが生理的に落ち着かない。電池の自己放電くらいの電流だろうが、どうも古い人間でいけない。Sdplay1

 穴あけは順調に終わった。組んでみる。相当計算してあったはずだが、あちこちで干渉が起きている。LCDのピンヘッダーや、スイッチ基板のスペーサーをやすりで削り落とし何とか納める。LCDの表示面をケースと揃えるのが一苦労だった。工作の腕は着実に上がっている。うむ、これなら恥ずかしくない出来だ。

 嬉しくて家族に見せびらかす。次女がお世辞かもしれないが「欲しい」と言ってくれた。可愛いやつだ。しかし、もう一台作れと言われれば二の足を踏む。コストは精々、全部入れても\2400(LCD \900 Mega328 \525 LTC1144 \300 BU9480F \200 4580DD \50 SDスロット \210)するかしないかだが、ケースの加工が大変だ。第一バッテリーがない。

 最初は意地で買ったDACチップがこんな形で実用品のプレーヤーになるとは予想もしていなかった。それにしても良い音だ。出力をPCのスピーカーから再生し、PCのCD再生ソフトとの音と比較してみても遜色がない。このPCの音は、マザー内蔵のサウンドチップでなく、ひところのちゃんとしたサウンドカード(Creative64)からの音である。こちらの方が音は整っているが、音の情報量から言えば今度のプレーヤーの方が多いような気がする。いや立派なものだ。Sdplay_2

リチウム電池の充電(3/26/09)
 プレーヤーの電池の充電はこれまでの携帯電話に入れてやると言っていたが、ウェブを見ていると、リチウム電池充電用の専門ICがあることがわかった。携帯電話の充電器用なのだろう、沢山のメーカーから出ているようだ。しかし、個人向けに手に入るものは殆どない。

 リチウムポリマー電池については前から「単純に充電していくと確実に爆発炎上します」とか、充電可能下限電圧というのがあってそれ以下になると充電されないどころか発熱、発火する危険があるとか、さんざん脅かされている。

 電池の状態に応じて充電のステップがあり手順を守らないとちゃんと充電されない。つまり電池とその充電器は常にペアになっているべきもので、自作するというのは余程仕様を把握していないと難しいようだ。これまでの携帯電話器を使って充電するのが間違いなく正解なのだ。

 しかし、ここへきてまたもへそ曲がりの悪い癖がでる。これで間違いないという状態に何となく反発したい気分になる。すこしちょっかいを出したくなった。さらにウェブで調べ始める。

 充電開始の温度と電池のそのときの状況に応じて最初は低い電圧をかけて様子を見、充電できるようなら、定電流で充電し、一定の電圧まで来たら定電圧で充電して行くステップが必要なのだそうだ。これはICにとっては恰好の活躍の舞台である。

 MAXIMのMAX1555、リニアテクノロジーのLTC4054、日本無線、ルネサス、探せば殆どの半導体メーカーが作っているのではないかと思うほど製品は多い。面白いことに情報は、電子工作ではなくインドアプレーンなどの模型飛行機のサイトから集まる。彼らにとっては、リチウム電池は飛行機の性能を上げる重要な部品だからだろうか。事細かな解説があり、とても参考になる。電池にも充電指定電圧が4.1Vと4.2Vの2つのタイプがあり、4.1Vのものに4.2Vをかけてはいけないそうだ。これは相当気を遣わないといけない。Ltc4054

 沢山ICは出ているのに個人で買えるものは殆どない。辛うじてLTC4054がインドアプレーンのショップに出ているが今は品切れだ。専門のICを使えば充電はほとんど心配なさそうだ。最初の最低電圧のチェックから、最後の定電圧充電のシャットダウンまで全部ICが管理してくれる。自作はこのICに電源をつなぐだけである。いずれは充電器を作ってやろう。

規格外のクロックに気づく(3/28/09)
 プレーヤーを外に持ち出してテストしている。最近は¥400しない2GのSDカード1枚でCD4枚分の曲が入る。通勤の往復2時間でも聞ききれない。MP3などの圧縮系との音の差は少し良いヘッドフォンで聞けば歴然としている。音の透明感が違う。これは思わぬ拾い物をした。こんなに実用性が高いとは正直作るまで考えてもいなかった。

 ランダム再生機能を次の開発の計画にしていたが、考えてみたらクラシックしか聴かない自分にとっては特に必要性を感じない。協奏曲や交響曲の楽章をランダムに聴くということはまずないからだ。それより、聴きたい曲がファイルリストの中間にあって、聴いている途中で電源を切ったとき、次に電源を入れると頭に戻ってしまうのは不便だ。EEPROMで記録しておき、次の開始で頭出ししたい。いわゆるレジューム機能である。

 それと、リチウム電池は過放電するとあとが大変だ。その監視もしておきたい。途中経過も表示したいところだが、これはプログラムの構造を変えない限り今のままでは無理だ。ファイルをアクセスした空き時間にLCDにデータを送り込み、割り込みなどで表示終了を管理するマルチタスク構造にしないと経過時間などは表示できない。まあこれは将来の課題とすることにしよう。

 あれこれ考えながら、プレーヤーを持って近くの桜の名所の開花の状況を調べに行く途中、音が止まった。あれ、もう電池がなくなったのか。もしかしたら過放電? あわてて家に帰りこれまでの携帯電話を取り出し充電したみた。問題なく充電が始まった。胸をなでおろす。しかし、電池電圧はまだ3.5V近くある。おかしいなと思ったとき、はたと気がついた。いけない。20MhzのMega328を3.3V電源で動かしている。確か、クロックによって電源電圧に下限があるはずだ。データシートを見てみた。あれあれ、20Mhzのクロックで動作を保証しているのはVccが4.5V以上じゃないか。3.3Vでは、上限が13.3 Mhzである。良くこれまで動いていたものだと逆に感心する。

 まあ商用製品でないのだからそう目くじらを立てる必要もない。何しろ動いているのだ。早めにMCUが止まって電池の過放電の監視をする必要がなくなったと強がりを言ってみたが、さすがにちょっと気分が悪い。ロジアナで前に見たときは、バッファーの切り替えとファイルアクセスの余裕は半分近くあった。上限の13.3Mhzの石がなかったので16Mhzの石で様子をみてみた。これでも規格外だが20%程度のオーバーなら許容範囲だろう。おお、問題なく動くようだ。ロジアナで確かめてみる。アクセス時間と読み出し間隔との比率は80%まで高まったが、まだ少し空きがある。しかし、定格の13.3Mhzはちょっと難しいか。16msdplay

レジューム機能の追加(3/30/09)
 あれこれ迷ったが、とりあえずレジューム機能を入れてSDカードプレーヤーのプロジェクトは終わりにすることにした。ところが、これが結構難しい。このあいだのオブジェクト指向的設計で分割した3つのブロックのうち、ひとつだけを関数に切り出し、他をメインルーチンに吸収してしまったことが災いしている。

 ファイル番号をまわして選択するルーチンにスイッチ管理が入っているので切り分けることが出来ない。やれやれ、やっぱり機能を切り分けて開発しておけばよかった。後悔しても遅い。作り直すのも面倒だ。レジューム機能はファイル番号を進めるだけなので、この部分だけ関数として切り出す。こうしてソフトウエアは汚くなっていくのだが、この際仕方がない。

 メディアの識別は、chaN氏のFatFSの内部関数にscan_files()というのがあったのでこれを利用させてもらった。ファイルサイズとファイル数をEEPROMに記録しておき、同じのときのみ同一メディアとみなして記録してあった再開番号を読み出しファイルを進める。このscan_filesという関数はなかなか良く出来ている。ルートディレクトリ上のファイルだけでなく、全てのサブディレクトリ下のファイルまで、再帰的に自分を呼び出してファイルを数え上げているのだ。見事なものである。

 最初、これに気がつかなくてディレクトリのあるディスクで暴走し、頭を捻ったが引数をリテラルにしてスキャンしているためとわかり、ファイルパスを収容するアドレスをバッファーに移してトラブルは解消した。マイコン用のファイルシステムなのでサブディレクトリ下のファイルは見えないものだとばかり思っていたがそうではなかった。いやいや恐れ入りました。脱帽である。

 午後から始めてその日の夜遅くには何とか動き始めた。EEPROMの関数も慣れてきたのかもうトラブルもない。ファイルのスキャンによる遅れも殆ど気にならない。一瞬のうちに頭出しが出来る。うーむ、これは便利だ。いつでも途中で止められる。Sdplay

 去年の暮から始めた、DACチップによるCD音質のSDカードプレーヤープロジェクトはこれでほぼ所期の目的を果たしたようである。ブレッドボードにはちょうど同じ部品がワンセット残っているので2台目を作る選択肢もあるが、当研究所としてはそろそろ次の企画を考えたい。このあいだ付録基板のついた雑誌(インターフェース2009年5月号)をまた買ってしまってARMの32ビットプロセッサーが2つも揃ってしまった。いよいよFPGAのCRTCか。そうなるとAVR研究所というのも名前を換えないといけない。

 上記のレジューム機能を入れたプレーヤーのソフトウエア(V2)を、AVRstudioのプロジェクトファイルの形で下に置きます。クロックは16Mhzになっています。クロックの変更は、メインファイル(SDPLAY328.c)の定数定義の部分で、SYSCLKを変えるだけですべての時間依存のステートメントが調整されるようになっています。プロジェクト名が前のバージョンと同じなので気をつけてください。

「SDPLAY328V2.lzh」をダウンロード

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2009年3月24日 (火)

実装版SDカードPCMプレーヤーが動いた

形になっていく喜び(3/21/09)
 少しづつ実装を進めている。このあいだ作ったアートワークは全体を見るのは良いが、ピンアサインを正確に確認できない。電源部、クロック部、DACまわりと部分的なアートワークを描き直したが、これは思った以上に効果があった。まず細かいアートワークを見間違えて起きる配線ミスをなくせる。それとハンダ付けのときの作業が単純作業になって迷う必要がない。

 今回は両面基板で、チップコンデンサーを多用したので、正確な位置決めが特に必要で、部分アートワークを描いて十分確かめておけば、実際のハンダ付けは何も考えずに済む。最初は電源ラインだけ、部分的なアートワークを描いて作業していたのだが、アートワークを描く手間と時間以上の効果があって、そのあと殆どの部分もこの方法で実装した。Photo

 今まで基板に載せてみていただけのフォンジャックやボリュウム、LCDを接続するピンヘッダー、ICソケット、SDカードソケットなどが次々に固定されていく。ひとつひとつの部品では感じなかった「命」のようなものが、こうして固定されて所定の位置に納まって来ると、段々部品に命が吹き込まれていくような気分がしてくる。これがものを作る喜びと言うのだろうか。

 しかも、これは単なる物ではない。間もなくSDカードに入れた音楽CDを再生する生き物に変身するのだ。期待と不安に胸をふくらませて、黙々とハンダ付けを続けていく。LCDの配線とSDカードの接続が集中するところも、それぞれ別のアートワークを描いたおかげで、予想したよりはるかに短い時間でハンダ付けが終了した。うむ、今度もパーフェクトゲームができるかな。

あとは、ケースにつけるスイッチ基板の制作を残すだけである。

電源を始めて入れる時の緊張がたまらない(3/22/09)
 今日は、久しぶりにテニスにでかけたが、途中から雨が降り出し中途半端に帰ってきた。いつもなら欲求不満がたまるところだが、今日ばかりは違う。プレーヤーの実装があとわずかで完成するのだ。テニス道具の後片付けもそこそこにハンダごてに電気を入れて工作を開始する。

本体の基板にスイッチ基板とのコネクターを取り付け、電池フォルダから配線して通電テストが出来るところまで来た。スイッチ基板がなくてもコネクターにジャンパーピンをつければ電気が入れられる。タクトスイッチが動かなくても初期画面が出るかどうかのテストは出来る。気がせいてきて一刻も早く動くかどうか試したくなった。Photo_2

 電子工作で最も緊張する最初の通電である。ウェブを見ていると色々な対応があって面白い。怖くてなかなか電気を入れられず一日置いてからやっと電気を入れたなどと書いてあるのを読むと、皆同じなのだなあと思わず笑ってしまう。高価な部品を沢山使った工作のときは確かにチェックを何度しても緊張するに違いない。

 今度のプレーヤーはそんな部品はないが、結構な手間はかかっている。実装の密度も高い。もし動かなかったときの原因究明が大変だ。しかもUARTなどのデバッグロジックが入っていない。ISPピンも基板にスペースがなく、つけていないのでMCUの動作確認も出来ていない。一発勝負である。不安がよぎる。

 電源がショートしていないことを確認して、恐る恐るスイッチ代わりのジャンパーピンを差す。LCDの画面は全く反応がない。やれやれやっぱり駄目か。テスターで電圧を測る。
ふむ、各ICの電源ピンに所定の電圧は上がっている。他のところも測る。SDカードの電源OK、LCDも大丈夫、あれ、コントラストの負電圧がプラス電位になっているぞ。これではLCDは表示されないはずだ。

 DC-DCコンバーターのLTC1144がおかしい。負電圧が出ていない。配線を確かめる。間違っていない。コンデンサーの極性も確認する。問題ない。何故だ。ソケットを使わず直付けしたのでハンダ付けの熱でやられたのだろうか。うーむ困った。直付けしてしまったのでICが不良になったかどうかは、外さないと調べらない。しかも外すときにまた熱を加えることになる。進退窮まった。

 LCDが表示されない限りは前へ進めない。夜も更けてきたのでとりあえず今日はここまでとする。

部分アートワークの功罪。実装版が動いた!(3/23/09)
 今日は出番の日。仕事をしながらも時々プレーヤーのことが気になって、メモにこれからのトラブルシューティングの手順を書き出したりしていた。このまえのレギュレーターと違ってそんなに長い間半田ごてをあててハンダ付けをした覚えがない。あの程度で不良になるとは考えにくい。配線違いは何度も確かめたので問題ないはずだ。原因は恐らくここではなく外にある。そういえば負電源部のグランドを配線するとき、近くにグランドポイントがなく、かなり長く引き回して接続している。LTC1144のデータシートにはVccのパスコンの指定はないが、長くなりすぎて別の発振を起こして負電圧が出ないのかもしれない。パスコンをつけて見よう。それでも駄目なら仕方がない。LTC1144の交換だ。予備が買ってある。

 帰宅した後、気分を改めて、LTC1144のグランドの部分を確認する。確かにVccはレギュレーターの近くから来ているが、グランド線は、MCUやSDカード、DACを経由してからのグランド接続になっている。ちょっと待て、このグランド線は電源レギュレーターのグランドとどこでつながっている? うひゃあ、どこともつながっていない。パスコンの話どころではない。そもそもメインのICをつなぐグランドが浮いている。これではLTC1144どころか他のICも動いていない!Photo_3

 部分アートワークで実装の効率は上がったが、部分部分は完全でもその連絡の確認がおろそかになっていた。わかってしまえば単純な配線もれである。あわてて半田ごてに電気を入れ、グランド線を追加する。さあこれでどうだ。電気を入れる。やった。LCDにWelcomeメッセージが表示される。良かった。ここまで来れば先が見えた。一旦テストを止め、まだやっていないスイッチ基板の配線を急ぐ。

 逸る心を抑えて出来上がったスイッチ基板を本体に接続する。電源スイッチはとりあえずスライドスイッチを仮付けして電源ON。おおお、ファイルリストが出た。ヘッドフォンから音楽が流れる。やったやった。グランド線一本を除けば誤配線もなく、今度もパーフェクトゲームだ。ケースにまだ入っていないが、ポータブルサイズのPCMプレーヤーの完成である。オペアンプの抵抗をオーディオ用に金属皮膜抵抗にしたためか音が前より安定している。電池の固定のため燐青銅板を少し切り取り、基板に半田付けして押さえバネにしてみる。うむ、これは良さそうだ。Photo_4

 部品を揃えて工作を開始してからおよそ一ヶ月、遂に、実装版の非圧縮(リニア)PCMのSDカードプレーヤーが動き出した。残るのは上蓋のケースの加工を残すのみである。手の平に乗せてみる。うむ、この程度の大きさなら実用性もありそうだ。

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2009年3月14日 (土)

手書きのアートワークはこの辺が限界

 ブログの記事が滞っている。もう20日近くあいてしまった。電子工作は私の数多い趣味のひとつだが、最近はまるでこれが生活の中心になったかのように夢中になっていた。ブログのアクセスも日増しに増え、紹介していただけるサイトがあったりして、何かせかれるように工作に熱中し、ブログも頻繁に更新していたが、さすがに少し息が切れた。

 息が切れた原因はそれだけではない。珍しくこの2週間の間に、所属する団体の全国大会の準備と、2日間のセミナーの研修講師、それに確定申告という仕事らしいものから、恒例の2泊3日のスキー行、昔の職場の旧友会に学生時代の友人の飲み会という遊びまで、行事が集中し、時間がなかったのだ。

 工作の方はあれ以来少ししか進んでいない。しかし、あまり日をあけると記事の連続性がなくなってわけがわからなくなる(自分でも)ので、進んだところだけでも時系列にまとめておくことにした。

ステンレスのハンダ付け(2/26/09)
 東京に久しぶりに雪が降った。積もりはしないが雪が降るのを見るのは楽しい。雪国生まれの妻はうんざりするのだそうだが、娘と2人で何となく華やぐ。プレーヤーの工作のほうはレイアウトが決まったので、いよいよ基板固定の穴などを開け始める。今度の電池は薄いので余り高さにこだわることはないが、基板の裏が無駄に空いて上が混雑するのは避けたい。そのためには基板はなるべくケース近くに固定する必要がある。スペーサーを薄くすれば良いのだが、これが小さいと組み立てのときにやたらに苦労する。

 見るともなく見ていたchaNさんの電子工作のページに良い解決方法があった。ナットを基板にハンダ付けしてしまうのである。おお、これは楽そうだ。これならビスだけで固定できる。今度はこれにしよう。いやいやchaNさんにはシリアルライターやFatFSから何から何までお世話になりっぱなしである。

 2.6ミリの穴を4隅に開け、用意したナットを基板のランドにハンダ付けしようとした。あれえ、ハンダがビスに乗らないぞ。あ、しまった。このナットはステンレスだった。いまどきのネジは殆どがステンレスだ。ステンレスはアルミと同様、表面の酸化膜が強いので半田付けできない。これは困った。サイズを2.6ミリにしたので真鍮のナットはそう簡単には手に入らない。こんな小さいケースで3ミリはみっともない。どうしようかと考えていたとき、どこかでステンレスにハンダ付けした人の話を思い出した。

 困ったときのウェブ頼みである。「ステンレス ハンダ付け」で検索してみたら、何のことはない沢山のページがヒットし、専用のフラックスさえ用意すれば、簡単に半田付けが出来ることがわかった。対応商品が何種類も売られている。ただ、どれを見ても電気、電子部品のハンダ付けは出来ないと書いてある。

 これは、フラックスが強酸性のためハンダ付けのときに飛散したフラックスが付近の部品を腐食させるためであると勝手に解釈する。幸い、今半田付けが必要なところは配線ではなくナットだ。別のところでナットにフラックスをつけてハンダを乗せ、そのあと基板に持ってくれば問題ないはずだ。

 秋葉原に行くまでもなかった。友人と会うため出かけた渋谷で、東急ハンズに寄る。工作工具のコーナーには、ステンレス用のハンダとフラックスが何種類も売られていた。早速買い求める。家に帰り、工作コーナーのまわりのパーツを遠ざけてから、ステンレスのハンダ付けに挑戦する。フラックスは噂にたがわず強力である。机の工作の下敷きにしている紙に間違って垂れると、紙から気泡が浮き出し紙が分解し始めた。これはすごい。あわててティッシュで拭き取り、さらに部品を遠ざける。A3011580

 ナットにフラックスを極くわずか付けてハンダを乗せる。おお、あっという間にナットの角一面にハンダが流れる。これは効果抜群だ。フラックスをうっかり多めにつけてハンダを盛ったところハンダがネジ山(谷?)に入ってしまいナット全体がハンダまみれになってしまった。ステンレスのハンダ付けがこんなに簡単とは思っていなかった。コツはなるべくフラックスを少量にすることである。つけすぎると周りの金属の酸化膜が全部はげ、あっという間にハンダがまわってしまう。

 半田乗せが終わった4つのナットを良くフラックス洗浄液で洗い、基板上にハンダで固定する。何の問題なく固定が終わる。ケースに正確に穴を開け基板を固定した。うーむ、我ながら上手く行った。

電池フォルダーを作る(3/01/09)
次は電池フォルダーの制作だ。デジカメや携帯電話のリチウム電池の出力端子は普通の乾電池と違って、大抵は凹型で簡単に燐青銅板を切って間に合わせの接点を作ることが出来ない。正確な位置決めが必要で、接点の形や大きさにも制限がある。そのため元の携帯電話の充電器の接点を良く調べて、それに近い0.5ミリの燐青銅線を買ってある。この燐青銅線だけでプレーヤーが動くだけの電流が流せるかどうかは、ブレッドボードにつけて実験済みである。

 さらにフォルダーの天板にみなして作った汎用基板の切れ端には燐青銅線を通るように1ミリ間隔で穴を開けて接点にし、電池についている位置固定用の突起が入る切り欠きをつくり接点が固定されることも確かめてある(前回の記事参照)。

 しかし実際にケースに電池を置き具体的な電池接点を作ろうとしたがこれがうまくいかない。最初、天板は浮かし(電池を支えるだけ)、外側ケースを燐青銅線の一方の支点にしバネにしようとしたが、不安定で燐青銅線のバネの効果が効かず接触がうまく行かない。この方法ではどうも実用になりそうにない。

 やはり天板に燐青銅線をしっかり固定してバネを効かさないといくら電池を固定しても接触が少なすぎるようだ。それと燐青銅線は反発力は強いのだが、一旦曲げて形を作ってしまうと、そのあとは急にもろくなって簡単に折れる。つまり調整が利かない。形は一発勝負で決めなければならない。少しずれたからと言って曲げ直すと、もうバネでなくなる。A3011575

 3回接点を作り直し、やっと安定的に接触する接点が出来た。形は珍妙でウェブを探したがこの種の記事はどこにもなく、がた老AVR研オリジナルである。もっと良い方法があるのかもしれないが、微調整した結果、ほんの少し押さえるだけで安定的に電圧が出るようになった。とりあえず仮組み立てした電池フォルダーでブレッドボードのプレーヤーが動いた。一安心である。

 最後は電池の固定である。電池を位置を決める側板の固定はボンドなどの接着剤を使えば手軽なのだが、何となく抵抗がある。それに接着剤だけでは信頼性に問題がある。当初は2ミリのタッピングネジで基板の切れ端か、細く切ったアクリル板を裏から固定する予定だったが、これもちょっと大げさすぎると思い始めた。それに外部ケースに接触する部分が問題だ。最初は外部ケースに直接当てるつもりだったが、どうも操作性が悪い。ここも迷っている。

何とかアートワークまでできた(3/13/09)
 忙しくて電子工作に手が中々廻らない。それでも少しづつは進めている。ポリカーボネートでも大丈夫と言う触れ込みの接着剤をスキーに行く前にテスト的にケースにつけて帰って調べてみたら、殆ど満足についていなかった。接着剤自体が柔らかく指でこするととれてしまう。

エポキシ系の接着剤もこのときありあわせの基板を接着テストにつけておいたが、こいつは日を置くと滅法強くなることがわかった。天板や側板をネジで固定する必要もなさそうだ。バッテリーの固定の方は、既に買ってある燐青銅板を切り出して基板に半田付けし押さえにする予定にしている。

 ただ、天板は力がかかる上、接着剤の接着面が少ない。そこで、ピンヘッダーの中のピンをとりだして基板にハンダ付けし天板を固定する支柱にするアイデアを思いついた。この金属の支柱と天板をシアノクレート系の瞬間接着剤で固定してみた。うむ、これはうまく固定されたようだ。A3141680

 仕事が一段落したので、バッテリーを横から固定する側板を、ハンズで昔買った2ミリのアクリル板から切り出す。万力に固定し割れないように少しづつ切り出していく。基板との固定は、シアノクレート系はアクリルを溶かすので、ここはエポキシ系の接着剤にすることにする。エポキシ系は強力なことがわかったのでネジの固定は考えない。

 バッテリーフォルダーが確定したので次は、いよいよ部品の最終的なレイアウトを決める。うひゃあ、入らない。ランドの数を数えてみて当初より一列少なくなっていることがわかる。アクリルの側板が広すぎた。接着しておかなくて良かった。あわててアクリル板をまた削りだす。割れないか冷や冷やしたが、細くしても(3ミリ)結構剛性があって大丈夫なようだ。A3141685

一列分のランドを確保して、何とか、部品の載せおえることが出来た。しかし全部のICをソケットにすることが出来ない。MCUとオペアンプは今後のことを考えるとソケットにしておきたいが、他は直付けだ。びっしりICと電解コンデンサーが表面を埋め、ランドが足らないので相当数の抵抗が裏にまわりそうだ。

 アートワークを始める。うーむ、手書きのこの方法では限界に近い高密度だ。線の交差はしないという原則は守れそうにない。今回は初めての両面基板だが、手書きのアートワークでは両面基板を使いこなすのは難しい。Pcmplyr_artwork

消しゴムのくずだらけになったが、やっとのことで描き終えた。どうも実際のハンダ付けの作業に役立つかわからない真っ黒なアートワークだが、すべての結線を描き込んだことで不思議な安心感が広がる。アナログの方は思ったほど複雑でなく何とかなりそうな自信もわいてきた。アートワークの効用には、こういうのもあるのかもしれない。

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