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2009年6月 5日 (金)

Beagle Boardを動かしてみる

 話は少し前後するが、このあいだ手に入れたBeagle Boardの動作試験の報告である。ウェブ上には既に沢山の人の動作報告があがっているので、今さらの感もあるが、自分の備忘録を兼ねてまとめておく。いや、こいつはすごいマシーンだ。

Linuxの組み込みバージョンAngstromの立ち上がりまで(5/29/09)
 STM32の開発が一段落したので、懸案のBeagleBoardを触っている。足りなかった部品、UARTケーブルは、このあいだ既に作ってあり、ROMモニターが動くところまではテスト済みである。Beagle

 次のステップは、ここにLinuxやAndroidなどのOSをインストールすることである。例によって先人の経験をありがたく参考にさせてもらうことにする。お手本にするサイトは、既にここに決めてある。このサイトは前から評判になって目をつけていたところで、ここではLinuxの組み込みバージョン、Angstrom(オングストローム)のデモ版を動かすところまで丁寧に教えてくれる。本当に良い時代になったものだ。

 Beaglebootこのサイトの著者はちょうど私と同じソフト系の人で知識の層が似ており理解が早い。恐らく私より遥かに若いのだろう。UARTのフロー制御を「なし」にしないと動かないので苦労したというところで笑った。昔シリアルが全盛のときは、フロー制御をしない「フリーランニング」という結線があり、これは、シリアルのCTSとRTS、DSRとDTRをコネクターの中で結んでしまう。

 こうすると、片側がフロー制御を要求する機器であっても問題なくつながる(自分が要求したものが返るので)。もちろん本当のフロー制御はできない。上品な言い方ではないが「垂れ流し」とも言っていた。そうか、シリアルはもう誰も使っていないので、こういうことは忘れられているのだろう。年をとったことを実感する。

 それはとにかくこのOSのインストールにあたっての問題は、UNIX(Linux)マシンが手元にないことである。Linuxは10年ほど前、今の電子工作同様熱中し、家中のPCや会社のPCにインストールしまくっていたが、今はすっかり手元にない。

 へそ曲がり、天邪鬼な性格なので、みんなが騒ぐようになるとかえって熱が醒めてしまう。Linuxも企業が使うようになってシステムが巨大化し、何か開拓者精神のようなものが失われたような感じがして興味が薄れたこともある。

 BeagleのためにLinuxをインストールするのも何なので、前から残してあったKnoppixのCDでLinuxを立ち上げてみた。ところが、このKnoppixのCDが古く、途中でどこかのサイトにリソースを取りに行く途中で止まってしまう。日付を見たら4年も前のCDだ。

 これじゃあ、いくら何でも古すぎる。久しぶりにLinux関連のキーワードでサイトを探した。最新版のKnoppix(6.1)を落とし(600Mだけれど数分。いや便利になった)、CDに焼いて立ち上げてみた。

 いやあ、立ち上がりの早いの何の。あっという間にLinuxが動き出した。ほんと浦島太郎の気分である。こんなに早いのなら、これを実用としても十分使える。

 SDカードのフォーマットが少しややこしく(fdiskを間違えて、fdisk /dev/sdc1とやって大はまり。 昔もよくやった)、UNIXのコマンドがなかなか思い出せず苦労したが、長い名前のファイル名の入力も、Xの上の端末なので、コピー&ペーストで間違いなくできて、システムを入れたSDカードが完成した。この時点で夜中の3時。ここまで来たら、最後までやるしかない。BeagleBoardにビデオケーブルをつけ(ケーブルの方が重くてケーブルを動かすとボードがふらふらする)、通電する。Angstromterm

 おお、カーネルロードが始まった。流れるようにメッセージが続く。うむ、順調のようだ。よーし、Angstromのロゴがキャラクタ画面に出た。Loginプロンプトでユーザー名を聞かれて弱った。始め設定かと思って新しいユーザー名、パスワードを入れるが反応しない。夜が白み始めて頭がもうろうとしているので、よくわからない。やけっぱちでrootと入れたら動いた。

 ばかな話である。Linuxの初期設定のあたりをすっかり忘れている。最初はrootしかいないのだ。Xの方はどうだ。残念。画面はこのモードをサポートしないという表示でEnlightmentは動いていない。まあ、動いたことだけでもよしとしよう。部屋を片付けて店じまいする。

 次の日。グラフィック環境が動かない原因がわかった。まだ環境変数を設定していなかった。Angstromlogin グラフィックボードへの設定を、環境変数に設定すると、見事にLOGIN画面が出た。思わずキーボードを叩いてしまって、苦笑いする。USBにまだキーボードがつながっていない。USB-LANとセルフパワーのHUBをまだ買っていない。まあ、LOGIN画面まででたので大丈夫だろう。

 キーボードと、USB-LANアダプター、HUBをアマゾンに発注した。最近はPC用品を通販で買うことが多くなった。値段が安いのである。価格.comなどの安売りランキングを見て、秋葉原に行っても必ずしも同じ値段で買える訳ではない。しかし、アマゾンなどは、安売り通販ショップに伍して、負けていない。秋葉でうろうろするより安いことが多い。

あっけなくウェブブラウザーまで動いて拍子抜け(5/31/09)
 アマゾンからUSB関連の品物(エレコムワイヤレスキーボードTK-FDP001WH、コレガUSB-LAN  FEther USB-TXC)が届いた。早速BeagleBoardにつないでみた。HUBはまだ到着しないが、今使っているセルフパワーのHUB(エレコムU2H-TAP3420SWH)をこちらにつなぐ。こいつはUSB-UARTコネクターの抜き差しをスイッチで出来るように買ったものである。USBマウスは、ウェブでは不調と言われたEeePCにオマケについていたもの(Arvel MS35MBL)。

 ブートする。シリアルポート(COM1)に順調にメッセージが流れ、Angstromのロゴが出て無事に立ち上がったようだ。画面を切り替える。ソフトキーボードのログイン画面が出た。さあ、キーボードが入るか。おおお、ちゃんとパスワード入力がキーボードからできる。Enlightmentの画面に替った。マウスは?これも問題ない。

 なんだなんだ。何の問題もなく認識するではないか。ブートメッセージを見ていくと、キーボードの型番までしっかり出ている。昔のLinuxとは大違いだ。海外の情報を頼りに新しいI/Oディバイスを認識させるのが、インストールのときの大仕事だった。

 次は一番問題のLANだ。うまくいったので調子に乗って、動いたままUSB-LANを接続する。活線挿抜というやつだ。ほほう、何か動き始めたぞ。いかん。コンソールには eth0が設定されたが、downしているというメッセージが出た。ifconfig eth0とすると、IPアドレスが定義されていない。やれやれこれは自分でやれと言うことか。

 これが、ちょっと前までさんざん使っていたコマンドがもう思い出せない。gatewayはどこだ。pingを入れたがやっぱり外へでていかないぞ、とやっているうち、ifconfig eth0を入れてみたら、さっき定義したIPアドレスが変わっている。あれ、どうしたの。そうかDHCPが動いたのか。物は試しと、Elightmentのウェブブラウザーを立ち上げて見る。

 何と、何と、ネットがつながっている。Mogillaの初期画面が出た!いやあきれたものだ。何もしないで、全部つながってしまった。日本語フォントが入っていないので字化けしているが間違いない。余りにも簡単にイーサネットが動いてしまってあっけにとられるばかりだ。Beagleweb

 これは一体何なのだ。一区切りがついて考えた。BeagleBoardは明らかに今までの組み込みコンピューターとは違う。要するに、小さなボードで電子工作っぽいけれど、もう、ここまで来ると、これは電子工作ではない。ここはLinuxと変わらない。世界が全く違う。

 ハードに素人が立ち入る隙がもうないのだ。それにソフトウエアの規模が大きすぎる。ARM7あたりまでは、まだソースを追いかける気力があるが、このレベルでは無理だ。別の趣味に近い。

 これはこれで昔、Linuxにはまっていたから、がた老「AVR」研究所としては研究の意味はあるが、8ビットの石を工夫して機械にしているときの、わくわくする気持ちがない。
嬉しいことに、このあいだのSDカードのLPCMプレーヤーは、周りの複数の人から発注を受けて量産を考えなければいけなくなった。はじめてのプリント基板制作に挑戦しようかとも考えているが、電池ホルダーが難物だ。これの自作はちょっと大変だが、物を作る喜びは、こちらの方が大きい。

 BeagleBoardは、ケースを考えたり、日本語フォントのインストール、それとウェブサーバーとしての能力をテストする課題などが残っているが、これはもう電子工作とは別の次元の話だ。まあ、がた老AVR研究所としては、BeagleBoardは余技としておこう。本業はあくまでもAVRクラスだ(最近はARMばっかりだけど)。

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