LPCMプレーヤー2号機開発の道草
LPC2388のRTCバッテリーバックアップに挑戦する(7/12/09)
思わぬ道草を食ってしまった。ストロベリーリナックスのミニ液晶表示装置を2種類のIICで動かすライブラリを開発して、ちょっと自慢したくなり、ショップの問い合わせフォームで報告したら、あのPICNICで有名な社長の落合正弘氏ご本人がすぐメールを返してくれた。ショップへのこうした連絡はなしのつぶてということが多い。誠実な態度に感激した。
記事をアップしてからすぐ「ねむい」さんからコメントを貰い、ソフトIICのDDRの謎はいっぺんに解けた。冷静に考えれば、出力ポートを最初0にしておけば、ポートをハイインピーダンスの入力から出力に切り替えれば、そのポートは0になるというのは自然なことだ。 もっと早く気が付くべきだった。そのうえ、リリースしてからすぐバグを見つけてしまい、少しめげている。
ソースコードを見ていただければわかるが、欲張ってスクロールしようと思ってコードを追加したらあまりにも遅い(クリアに1msかかる)ので元へ戻したあと、テストを十分していなかったのが原因である。くやしいので、クリアをやめてDDRAMにデータとブランクを書き込む手法もあとから試したが、これもあまりスクロールに見えない。2行程度では難しいようだ。余計落ち込む。
こういうときは、手を動かしていやなことを忘れるに限る。前々からやろうとしていたARMのもうひとつの雑誌付録基板、LPC2388のバッテリーバックアップ配線に挑戦することにした。前の記事では、これはとても無理だと書いたが、このあいだChaNさんの掲示板にある動画で、ご本人が苦もなく、0.5ミリピッチで並ぶピンを切り、配線しているのを見てしまった。うわあ、出来るんだ。驚きと同時に勇気を奮い立たせてくれた。
しかし、手持ちの道具では、あんな細いピンを切ることは不可能だ。市販の超極細ニッパの刃先は0.3ミリというから、これで切れるのかもしれないが、出来るか出来ないものに¥2000近く投資するのも何か馬鹿らしい。
で、暫く様子を見ていたが、たまたまアートカッターというクラフトワークに使う極細のカッターがあるのをウェブで発見した。刃先の厚さが0.38ミリだと言う。これなら切れるかもしれない。値段も¥500から¥1000前後で手頃だ。他の用途にも使える。東急ハンズを覗いてみたら沢山あったので手頃なカッターを2本買ってみたが、すぐには取り掛からずにいた。
ところが、さらに強力な武器が思わぬところから手に入ったのである。このところ持ち歩いているSDカードプレーヤーを久しぶりに訪れたなじみのパブで自慢したら、何を考えたかマスターが奥からLED照明つきのヘッドルーペを持ち出してきた。使ってくれと言う。先日亡くなった母が使っていて誰か使ってくれる人がいないか探していたのだそうだ。渡りに船とはこのことだ。有難く頂戴した。
道具が揃った。ヘッドルーペをつける。少し重いが、3倍の拡大率で視点を自由に変えられるので、作業しやすい。カッターで少しづつVbatピンを削って切っていく。これがなかなか難しい。ニッパーならあっという間だろうが、隣のピンを痛めずに一つのピンだけを切るのは簡単ではない。しかし始めてしまったらもう切るしかない。切り屑が出てきて切れたか切れないかルーペを通しても良くわからない。別のピンを切っていたら最悪である。何度もピンを数えて確認する。
隣のピンも何か傷んできたようだ。これはまずい。もうやめようかとあきらめかけた時、Vbatピンが浮き上がってきた。おおお、切れたようだ。切り屑を針と洗浄剤で掃除して、テスターで切れたことを確かめる。よし、大丈夫だ。隣も確かめる。OK。いやあ冷や汗をかいた。
切断に較べたら、半田付けは気分的に楽だ。この前の1608のチップ部品のハンダ付けの経験が生きている。問題は線の引き回しだ。基板上にピンヘッダーを横置きしてボンドで固め、ここにVbatピンか ら引き出した0.2ミリのUEW線を配線する。
ベース基板にCR2032のフォルダーを付け、やっとのことでLPC2388のバッテリーバックアップ配線は完成した。いや楽しかった。こういう細かい手作業はいやなことを忘れさせてくれる。テストは...2号機が出来るまでお預けにしておこう。
EAGLEの入門書を買ってきた(7/15/09)
色々道草を食ってきたが、2号機開発の作業は遅々としているとは言え、少しづつ進んでいる。ソフトパワースイッチは、大体目処がついた。FatFSが丈夫になったので、ソフトがハングして、電源が切れなくなる可能性は少なくなったが、今のスイッチルーチンの構造は、スイッチが離されるまで外へ出ないので、この構造は変える必要がある。押している間に、LCDが動き始めたり、消えたりしないと、操作性が悪い。
まあ、これはソフトの世界なのであとから何とでもなる。ミニLCDが動いたので、ソフトの懸案は大体片付いた。いよいよメイン基板の具体的な設計に入る。
その前に、バッテリフォルダーの制作にかかる。エポキシ系の接着剤が強力なことがわかったので、1号機で苦労した電池接点基板は、ケースの三方に接着するだけで必要な強度はとれそうである。汎用基板をルーターのカッターで切り出し、やすりで削ってケースに合う電池接点基板を作る。
ここへ、燐青銅線の接点をつける。このあいだの充電基板で試した形状の接点が簡単で具合が良いので、同じ型にする。経験が生きている。簡単につけることが出来た。テスターで電圧を測る。うむ、軽く当てるだけで安定した電圧がとれている。快調である。これなら複数台をこなせそうだ。
メイン基板のレイアウトをもういちどやりなおす。充電回路も組み込むのでさらに大変である。部品が全部乗せられるかどうもかも自信がない。しかし、今度のメイン基板は、横の電池と同じ高さなので、配線 側が7ミリ近く空いている。いざとなったら、抵抗などはこちら側に入れることができるのでなんとかなるだろう。
それより大きな懸案は、配線である。汎用基板にUEW線で配線することにすっかり慣れてきており、これくらいの密度でも配線できる自信はあるが、同じものを複数作れるかというと、とてもその気力はない。今回のプレーヤーは少なくとも3台は同じものを作らなければならないことになりそうである(身内1台、ヘッドルーペを貰った店1台、会社1台)。
となると、プリント配線である。しかしこれはこれまでの工作とは全く違う大変な作業だ。もとより感光基板から作ることは考えていない。大掛かりな道具立てが必要で、今要求されているような精度の基板が作れるようになるまでには、気の遠くなるような時間がかかるだろう。現実解としてはCADで設計図を描いて、外国に発注すると言うのが一番有力なコースである。
今までに何度か、これをやってみたい気になったことがあるが、これはこれで相当な心構えと準備が必要なのでそう簡単に始められるものではない。
しかし、機は熟してきたようである。CADの定番、EAGLEの勉強を始めることにした。これが道草になるのかどうかは議論のあるところだが、手配線でも出来ることをCADでやろうというのだから道草の内に入るだろう。とはいえ、これがアマチュアの強みである。誰に束縛されるわけでもない。自由に自分のやりたいことができる。
ウェブには、沢山の経験記やノウハウが載っているが、ここはオーソドックスに全体を見渡せる勉強法にしよう。書店で、「プリント基板CAD EAGLE活用入門」(\2800)という参考書を買ってきた。読み始める。また新しい登山口に立った。頂上は見えないが、未知との出会いに心が躍る。
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コメント
EAGLEは私も使っています。便利ですよ。
慣れれば何とかなります。
付属の部品ライブラリに部品が無い場合は、ネットで検索すると意外と誰かが作って公開していますし、EAGLEのメーカーサイトにも付属以外のライブラリがダウンロード出来るようになっています。
パターンの配線は、オートのみしか使ったことがありません。
適切な部品の配置に関して知識がなく、趣味なのでオートで配線出来る様に配置しています。
基板製造は、OLIMEXに発注しています。
エッチングして自分で作るより安上がりではと思います。
穴あけが一番大変で、その手間がかからなくて良いです。
頑張って下さい。
投稿: そら。 | 2009年7月16日 (木) 06時25分