Olimex発注の合間にACの実験
Olimexに基板を発注した(9/05/09)
電力ロガーの仕様を考えているうちに、9月も何日か過ぎてしまった。既に設計が完成しているLPCMプレーヤー2号機のプリント基板を早くOlimexに発注しなければならない。EAGLEによる設計は、本体と、Xbee用のピッチ変換基板ともほとんど完成している。あとは、160×100のパネルの分割指示をする面付け図と、発注仕様を伝えるREADME.TXTを作るのを残すだけとなっている。
先達のウェブページを参考に、面付け図を作る。今作ろうとしている基板は本体が3 枚、ピッチ変換基板が2枚である。大きさに余裕があるので、基板の切り離しは、ディスクカッター(abrasive)を選ぶ。
おやあ、ウェブの面付けの参考図と一枚当たりのサイズを求める計算式が一致しない。1枚を2枚にディスクカッターで切るときは、図は、2ミリづつ、4ミリののりしろをとっているが、サイズを求める式は、(n-1)*2で2ミリののりしろしかとっていない。
本家のOlimexのサイトをあたる。FAQに出ている式は先の計算式と全く同じだ。ところが、この図を参照という切り離しの絵では、一枚づつのりしろを作っている。うーむ、良くわからない。
面付け図がおかしいというだけで作成を拒否されたと言う報告もあるが、わからないものは仕方がない。とりあえず2ミリのまま出すことにする。
EAGLEの基板図(brdファイル)を念のため、もう一度点検する。不要なレイヤーを表示しているだけで拒否されると脅かされているので、DRCを何度もかけ、ドリルチェックをし、何度も表示レイヤーを見直す。
あれ、SDカードの配線が少しおかしい。ややや、チップセレクトの線がCPUとつながっていないぞ。慌てて回路図(schematic)の方を確かめる。あれえ、回路図から間違っている。これはいけない。いくら基板図でDRCをかけてNo Errorにしても、回路図が間違っていたらお話にならない。
泥縄に近いが、もう一度回路図を最初から点検する。その結果、USBジャックのピンアサインが逆になっていることを見つけた。それとミニLCDのI2Cの接続が逆になっている。まあ、これはソフトで解決できるにしても、事態は深刻だ。
完全と思っていてもこれだけバグが出るのだから、まだ潜んでいる可能性がある。ICのピンアサインを中心にもういちどチェックし直しである。まるで、答えを全部書き終わった試験の残り時間で何度も検算し、同じ答えが出てきても確信が持てなくて益々不安が拡がる時に似ている。早くOlimexに送ってしまって、楽になりたい気持ちが募る。
面付け図と、2つのbrdファイル、readme.txtをまとめてzipファイルにする。ウェブの古い別のOlimexの発注ガイドのサイトでは、readme.txtとzipファイルを別々に送れという指示があり混乱する。これは明らかに1つの間違いだ。readme.txtなどという汎用的な名前でファイルを送られたら受け取った方は大変だ。
出来たzipファイルを念のためこちらで解凍し、正しくファイルが解凍されるのを確認したうえ、いよいよ送付である。「行けー」という掛け声とともに、送信ボタンを押す。何い、エラーで送れない。そんな馬鹿な。ブラウザーを動かしてみる。ありゃりゃ、ネットが不通だ。
よりによって、このタイミングで回線が切れている。しかし、何もこんなタイミングで回線が切れることはないだろう。高ぶった気分が納まらない。どうしてやろうかと頭が激しく回転していた時、ウェブが復活した。数分の回線断だったようだ。
メールを送り直す。今度は順調だ。zipファイルを添付したOlimexへのメールは無事、ブルガリアに向けて出発した。出した日は土曜なので受け付けられるのは、あさっての月曜だろう。今のところエラーメールで帰ってこないので、とりあえずOlimexのメールボックスには納まったようだ。
交流(AC)波形を調べる(9/6/09)
発注データは送ってしまった。今さらもういちどEAGLEを動かして図面を見る気にはならない。誤りに気がついても間に合わない。気分が悪くなるだけである。手持ち無沙汰になったので、このあいだ思いついた実験をしてみることにした。
考えてみたら、オシロがあるのだ。50Hzの交流など簡単に観測可能な環境を持っていることを忘れていた。電圧と電流をそれぞれ観測して、家庭内の機器が、どんな負荷か調べて見ようと思いたった。特にトランスを経由したあとの電圧を見てみたい。
電圧の測定は直接100Vからとるのでなく、トランスを経由して絶縁すれば、危険な直接接続は避けることが出来る。しかし、トランスというのは誘導負荷のかたまりみたいなもので、これを経由して波形を見るのは本来意味がない。ただ、理論的には位相差は出ないことになっている(理想トランス)。これがどの程度なのか実際に見てみようというのである。
こんなに絶縁にこだわるのは理由がある。家庭用の100V ACは漏電による感電事故に備えて必ず片側が地面に接地されている。筐体(接地してある)などにホット側が漏れ出せば直ちにブレーカーが飛び、接地側が漏れても漏電ブレーカーが動くようになっている。
この結果、100Vを機器に引き込んで、うっかりプラグ(電極の大小で極性はわかるようになっているが)を逆に差してしまうと、機器のグランド側が地面に対して100Vの電位差を持つことになる。触れれば当然感電するし、繊細な電子部品など触れればあっという間にこわれるだろう。
自作の、名刺ケースに入れたトランスのACアダプター(3、6V出力)で波形を見る。うーむ、少し歪んでいる。きれいな正弦波ではない。CTセンサーをはさむ。手持ちに10W以上消費できる抵抗がないので、とりあえず1Wほど流れるよう豆球(0.3A)の負荷をつける。おお、電流波形が出た。おや、このトランスの最大容量は0.16Aだ。これはいかん。焼けてしまう。
トランスにCTセンサーが動くほどの電流は流せないことがわかった。待てよ。テーブルタップを使い、ひとつをトランス、もうひとつを別の機器に入れ測っても、その時点の電圧と電流が測れるのではないか。
やってみた。見事に各種の機器の波形を見ることができた。トランスの電流電圧位相差は2次側が無負荷のときは180°になることがわかる。電圧(赤)はこの際無視して電流(黄)波形を見る。
まず、手元の60Wの白熱灯スタンドを測定する。きれいな電流波形が出た。セラミックの半田ごても抵抗負荷なので正弦波である。次は、工作照明用の32Wの電球型蛍光灯 を使ったスポットライト。こいつは予想通り、派手なパルス波形が出た。調子に乗って、身のまわりの電気器具を片っ端から測り始める。スイッチング電源のDCアダプターも、完全なパルス波形だ(電流が少ないためオシロ波形はスケールが替わっている)。
ドライヤーをモーターだけで測る。波形が半分削られたような電流波形になる。位相差はそう激しくない(力率が高い)。いやあ面白い。ただ、電圧は同じタップ上とはいえ、器具の負荷点で測っているのではないので、何ともいえない。
まだこだわっている(9/7/09)
1週間ぶりに事務所に出る。メールを片付けた後、当面の仕事がないので、ウェブで非接触で100V電圧を測る手立てをあれこれ探した。まだ、こだわっている。日置という昔からある計測器メーカーが「世界初の非接触電圧計を売り出し」たという去年のニュースリリースを見つける。原理は詳しくわからないが、静電結合で双方の波形を測定し、その差を電圧とするらしい。そうか非接触で電圧を測ることは普通は出来ないのだ。少し安心する。
しかし、よく考えてみれば、ADコンバーターの部分さえ独立させ、そこでデジタルにしてしまえば、あとはフォトカプラーが使える。基板を別にしてグランドを独立させれば、感電の心配はなくなる。あの電力測定用のIC ADE7753もアナログ部とデジタル部のグランドは共通なので、この方式をとる必要がある。
絶縁型のADコンバーターがあればフォトカプラーも要らないのだがと、ウェブで検索してみたら、あったのである。前のICと同じ、アナログディバイス社のAD7400というADコンバータだ。アナログとデジタルの間が絶縁されている。3.5KV以上の耐圧だ。DigiKeyでも1個売りしてくれるが¥984と少し高い。
やはり考えていることはみんな同じだった。しかし、波形のサンプリングや、二乗平均をとる演算などの手間を考えれば(面白そうだけど)、専用ICのADE7753を使うのが最も合理的のようだ。DigiKeyで1個¥495で買える。絶縁はボードを分けてフォトカプラーを使えば良い。50Hzの観測データだ。フォトカプラーは高速である必要はない。汎用品で十分だろう。
DigiKeyで買いたいものが増えてきた。しかし、送料無料の¥7000にはまだまだ達しない。欲しいのは今のところ、イーサネットのPHYトランシーバーとこの電力測定ICだ。2つづつ買ったとしても¥2000少々にしかならない。
整流をオペアンプでやるか(9/8/09)
Olimexからまだ返事は来ない。波形実験の次は、CTセンサーからのAC出力をDCにする方法を思案している。整流回路だ。一番簡単なダイオードをシリーズにつけた半波整流回路は今度は使えない。ダイオードはどんなものでも順方向電圧降下というのがあり、微小電圧は整流できない。電圧が高ければたいした問題でないが、こんどは数mVからDCにする必要がある。電圧降下が少ないといわれるショットキーダイオードでも0.3V、入手難といわれるゲルマニウムダイオードでも0.1V、これでは話にならない。
やはりオペアンプで検波回路を組み、いわゆる理想ダイオード回路で、小電圧を整流する必要がある。しかしウェブに出ている回路は、スペクトルアナライザーなどに使う高周波の整流回路が殆どで、高速性が重視されており、50Hzなどという「ゆるい」対象向けの簡便な回路例がない。
オペアンプの整流回路といえば、このあいだのリズムキャプチャーで使った、単電源オペアンプの全波整流回路があるが、これは、ダイオードの順方向電圧以上でしか整流しない。
それにオペアンプを使うとなると、今度は消費電流が心配である。Xbeeをタイマーで止めて50μA以下にしても、こちらがミリアンペアオーダーで流れるというのは嬉しくない。
ダイオードの入力側にバイアス電圧をかけて、この区域をキャンセルし、ソフトで補正する方法も考えられるが、今度は、測定上限電圧が低くなってしまうし、バイアス電圧の変動が直接誤差になってしまう。難しいものだ。
となるとFETでオペアンプの電源制御か。やれやれおおごとになってしまった。
OlimexからPO用紙が届いた(9/8/09)
先週の日曜日にメールでデータを送ったOlimexから待望の返事が届いた。営業日2日目である。注文の殺到しているだろう休み明けにしては早い。夜の9時に届いているから現地は午後2時ごろだ。1日半というところか。来たメールはウェブで報告されている通り、たったの4行である。
Hi
attached is your po form
Best regards
Tsvetan / Olimex
噂のTsvetan(ツベタン?)君である。まあ、Best regards(どうぞよろしく)があるだけ良しとせねばなるまい。問題は、請求金額だ。どきどきしながら添付のPO用紙(Purchase Order form)ファイルを開く。良かった。追加料金はなかった。パネルの面付けはあれで合格したようだ。ドリル数が500を超えた追加料金3ユーロは織り込み済みである。Xbee基板を入れると、どうしてもドリル数が500を超え、どうせならと汎用基板のようにパッドを沢山つけて全部で800近くになっている。送料を含めて合計41.5ユーロ、約¥6000というところだろう。うーむ、Xbeeピッチ変換基板を日本で買って、4枚にした方が安かったか。
それはともかく、早速クレジットカード情報を書き込んで発注書を完成させる。支払いがカードで出来、しかも、その情報をFAXで送らせるという用心深さが気に入っている。海外との通信販売で一番神経を遣うのがお金のやりとりだからだ。
いよいよ国際FAXである。国際電話のかけ方を、ウェブで復習する。何、頭につける番号に沢山種類があるぞ。001だけじゃないんだ。マイライン契約のときはいらないだと?うーむ、そう言えば、あのマイラインってどうなったんだっけ。我が家の電話はだいぶ前から「ひかり電話」でこのあいだKDDIの「ひかりONE」に替えたばかりだがマイラインをどこにしていたのか全く思い出せない。
いくら読んでも、良くわからないので、一番ポピュラーそうな001010を選ぶ。FAXにカード番号を書き込んだPOをセットした。Olimexへの電話番号を入れる。数回、短い通話音がしたあと、先方のFAXのネゴシエーショントーンが聞こえた。やった、つながった。
FAXが動き出す。無事POを送り終わった。1時間足らずで処理は終了した。
次の日、Olimexからメールが届いた。例によって本文は
fax received
この一行だけである。まあ、これで用は済んでいる。POフォームを裏側にしてFAXしたのではないかと少し心配したが、これで安心だ。まさか白紙を受け取ってfax receivedとは書かないだろう。AirMailが結構日数を喰うみたいだが、今月中には届く予定だ。楽しみである。
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