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2011年10月10日 (月)

ソフトパワースイッチ難航: ガイガーカウンター2号機完成へ

 暗雲がたれこめている。CHANEYのキットを使ったガイガーカウンター2号機がもう少しで完成というとき、ガイガー管(以降GM管)、SBM-20不良の可能性が出てきた。

 通電時間が長くなると(30分以上)、検出パルスがどんどん増えてきて、数時間で当初の3倍から4倍になってしまう。このところの東京の環境放射線量は全く安定しており、この変化は機械以外考えられない。

S_pa104288 初めは改造による電圧の高すぎ(約500V)によるものと思っていたが、オリジナルのキットの状態(390V近辺)に戻しても同じ状況であることを確認した。電圧は時間が経っても変っていない。

 あらためてウェブでGM管の情報を詳しく調べる。それによるとGM管には内部クェンチといって、一旦放電が起きたあとの連続放電を避けるためガスが封入されていると書いてある。もしこのガスが抜けると、クェンチがうまく行かなくなって、パルスの数が増えてしまうという。

 そういえば、工作の途中、ケースに入れようとして管壁を少しへこませてしまった。これでガスが抜けたのかも知れない。しかし、本当にガスが抜けたのなら、最初からパルスが派手にでるはずで、時間とともに増えていくというのは良くわからない。

 ウェブをさらに探し回るが、こういう現象を報告しているサイトは見つからない。放射能を持つマントルを近づければ派手にカウントが上がるし、放射線を検知していることには変りはないので、検知器としては使えるが、測定器としては、電源をいれたままにすると線量が2倍とか3倍になるというのでは、数値を出す測定器としては意味をなさない。

 CHANEYのキットは、小中学生向けの教材ということだが、使っている管は旧ソ連製とは言え、市販の線量計にたくさん使われている定評のあるGM管である。こんなことが起きるとは考えられない。やはり、自分のSBM-20がおかしくなったというのが順当なところだろう。

 これはやはり、管を替えて調べてみるしかないか。ひところに較べると、GM管も入手し易くなった。さすがにまだ一般のショップでは売っていないが、オークションなどで見ると結構、品物がでまわり、値段も落ち着いてきている。このSBM-20あたりは、3千円近辺で買えるが、いまさらガイガー管でもないような気もするし、すぐには決断がつかない。

 既に1台、ガイガーカウンターはある。もうあまり放射能計測にこだわることはない。しかし、このキットのために、ちょうど合うケースをみつくろい、LEDの窓も開け、工作を進めて、あと一歩で完成するところまで来ている。このまま、引き下がるわけにも行かない。

SBM-20を新しく2本入手。しかしGM管の不良ではなかった(9/30/2011)

S_pa104287

 迷った挙句、SBM-20を初めてのヤフオクで2本入手した。恐る恐るの取引だったが、順調に品物が届いて胸をなでおろす。テストの結果、意外な事実が判明した。入手したGM管は2本とも、最初の管と同じように、程度の差こそあれ、すべて時間が経つにつれてパルスが増加していくことがわかった。最初の管はガス漏れしていなかった。このSBM-20という管そのものが、こういう性質を持っているのだ。

 もちろん、最初のガス漏れの疑いのある管は、1時間程度の連続測定でカウント数は2倍になるのに対して、新しく手に入れた管は、2時間近く連続しないと増えていかないという差はあるが、一定時間後、増加し始めることに変りはない。最終的には3倍から4倍になり、そのあたりで落ち着く。

Sbm20_sample このSBM-20を使った市販の線量計は沢山売られている。これらは大丈夫なのだろうか。それとも、この性質を補正する回路にでもなっているのだろうか。いずれにしても、今の回路のままでは、長時間測るのは無理がある。精々が1時間単位に測らないと正確な数値を求めることはできない。こういうものなのか。それとも買ったのが2本とも不良品なのか(まさか)。さあどうする、である。

とにかく機器としては完成させよう(10/2/2011)
 GM管の不安は残るが、工作としては中途半端なまま終えるのは面白くない。電子機器の定番、ソフトパワースイッチやペリフェラルの電源制御など新しく試みたものもある。とりあえずケースの中に入れて動くところまで工作を続けることにする。

 何かとても無駄なことをやっているような気もするが、まあ我慢して、黙々とLCDまわりの配線を続ける。テストしてみるとLCDの配線は一発で通ったが、あろうことか、表示が逆にでた。LCDを天地逆さまに取り付けてしまった。基板に貼られたシールで画面の天地を判断していたのだが、シールが逆に貼られていたとは気がつかなかった。やれやれ。

 LCDの表示の天地の修正は結構面倒である。接着したところをナイフではがす。強力な接着剤である。なかなかはがれない。ケーブルの出るところが逆になったので、押さえのアクリル板をミニルーターで一部削り落とす。ケーブルのとりまわしが変になるが仕方がない。何とか接続を終えた。よーし、SparkFunと同じ画面が出てきた。CPMからシーベルトなどの換算は、まだそのままだがLCDは問題なく動いた。 

 ファームは、まだソフトパワースイッチを実装していない。以前テストしたときのコードを参考にコードを追加していく。電源スイッチは画面制御用のタクトスイッチと兼用である。この処理が意外に面倒だ。長押しの時間を測るタイマーは、Mega328がタイマーを3つも持っているので、空いていたタイマーをこれにあてることが出来、コーディングの手間が省けた。

 動かしてみる。全く動かない。まあ、こんなものだ。printfステートメントを至るところに入れて動きを追う。少しづつ動き出すが、ボタンの長押しで、システムが立ち上がった直後、リセットがかかって前に戻ってしまう状況から抜け出せない。

 最初は、無印Mega328の割込みルーチンのエントリー先が違うのではとか、コンパイラーのライブラリが変わってしまった(AVRSPの再ビルドのときライブラリーチェーンが一時おかしくなった)ためではとか、ソフトを疑っていたが、原因はやはり、ハードだった。

ソフトパワースイッチは一筋縄では行かない(10/3/2011)
 ペリフェラルの電源をFETで入れるとき、突入電流でVccがディップし、CPUがリセットしてしまうのが原因だった。始め、オシロで調べてもVccのディップは見つからなかったし、インダクターや大容量コンデンサーなどを入れても全く改善されなかったため、ハードではなくソフトだとばかり思いこんでいた。

 ソフトで考えられることを全てやっても解決しないので、もう一度ハードに戻り、電源そのものを独立させたら、すんなり動いた。これに気づくのに、丸々1日かかった。ブレッドーボードを使っているといっても、DC-DCコンバーターは既に基板にハンダ付けしてしまってある。ハードをいじるのは面倒なのでつい不精していた。

 とにかく、ガイガーカウンター2号機のソフトパワースイッチは、ブレッドボード上でペリフェラル電源をCPUと別にしてはいるが、とりあえず動くようになった。スイッチの長押しで電源を入り切り出来、これを繰り返しても止まらない。いやあ、ソフトパワースイッチは予想通り面倒だ。まだ電源の共有が解決されていない。最悪の時は、電池を2つ用意しなければならない。

 それに、GM管の表示が増えてくる件については未解決のままである。この問題は、外部クェンチ回路の雛形を入手したので、ソフトパワースイッチの完成後、テストしてみようと思う。連続パルスをある程度除去すれば使えそうな気もする。

バグがとれていく過程が楽しい(10/4/2011)
 ソフトパワースイッチが動き始めたので、少しづつ先にステップを進める。まず最初の懸案は、パワーダウンモードが本当にそれにふさわしい消費電流になっているかの検証である。これをやっておかないと何のために苦労したのかわからなくなる。以前、Xbeeでも本当のパワーセーブに苦労した。

 電流計で測定する。あれえ、電源を切っても電流が1.3mAも流れている。少ないとはいえ常時この電流が流れていたら電池はあっというまになくなってしまう。パワーセーブどころではない。何だ何だどうしてだ。プルアップ抵抗からはピンがHighなら電流は流れないはずだが。

 おや、プログラムが動く一番最初は10μA以下だ。ところが一旦動かした後は、同じパワーダウンモードになっても、1.3mA以上になる。不思議である。どこかのI/Oポートの設定で電流が流れてしまうようである。

 ここにばかり時間をとっておられないので、プログラム開始直後の初期化を、電源ONループの中に入れてもういちど初期化をすることにした。これでこの問題は解決した。副作用は、UARTが少しおかしくなるが大勢に影響はない。とにかく待機中の消費電流は9.7μAになった。

 データシートに出ている6μA(5V WDT許可)に較べると、やや多いが、まあこんなものだろう。フューズビットで、WDT(ウォッチドッグタイマー)を禁止にすれば、もう一桁下がるはずである。

 次は、電源用のタクトスイッチのI/Oピンが、作動状態になると機能しなくなるバグである。おかしい。同じことをやっているのにI/Oピンが立たない。何故なのか。しかし、これも面倒なので、対症療法だが、スイッチフラグの変数を増やして、I/Oピンを見ないですむようにする。

 これはのちほど、原因が判明した。プログラムは考えたようには動かない。書いたように動くという格言を地で良く失敗である。メインループの最後に、電源OFFのためのルーチンがあり、ここでしっかり、パワーダウンボタンの押下が終わるのを待っていた。

 作動中は必ず電源OFFのリクエストをチェックするために、ここを経由する。従って、このボタンをいくら押しても、実際のチェックでは、このボタンが離れてから到着する。考えてみたら当たり前のことだが、頭に血が昇っているときは、目の前のルーチンに気を取られて「おかしい、おかしい」ということになる。情けない。 

 少しづつ問題点が解決されていく。ささやかなトラブルだが、どんな小さな問題でも解決されていくというのは気分が良いものである。今までの暗い気持ちが晴れる。

レギュレーターで解決したと思ったのも束の間(10/6/2011)
 バグがなくなったとはいえ、まだ電源は独立電源である。このままでは2つ電池が要ることになる。電源を共有するための方策をブレッドボード上で、あれこれ考える。インダクターと大容量コンデンサーの電源のデカップリングは前に試して効果がなかった。次は定電圧レギュレーターである。以前LPCMプレーヤーのときに大量に買い込んだロードロップのXC6202の出番である。

 CPUのVccは現在、生のリチウムバッテリーに直結してある。レギュレーターを通せばペリフェラル電源投入時のディップをなくすことが出来るだろう。やってみた。うーむ、これでも駄目だ。おかしいな。もしかするとリセットするのは別の原因なのか。

 ペリフェラル側にレギュレーターを入れるのはどうだろう。4Vのリチウム電圧を一旦3.3Vに落とし、それをDC-DCコンバーターの入力にするのは、とても無駄な気もするが、この際だめもとである。

 ややや、動いた。何ということだ。DC-DCコンバーターの突入電流をレギュレーターが緩和したのか。CPUは共通電源で何事もなく立ち上がり、ガイガーカウンターの高圧部にも電源が入った。わけがわからないが、理屈はどうでも動けば良い。ブレッドボード上の回路を意気揚々と、基板に組み込む。これで解決だと機嫌よく実装テストをする。と、これが何故か、またリセットして先に進まない。えっえー、どうして?ブレッドボードでは動いていたのに何故?信じられない。

 泥沼が続く。回路をハンダごてで次々にはずしてテストを続ける。どうもノイズを拾っているのか回路が近接していると、電源を独立させていても入り切りのタイミングでリセットする時がある。SBM-20の外部クェンチ回路どころではない。人生が暗い。

オシロでVccのディップ波形を遂にとらえた!(10/9/2011)
 ソフトパワースイッチの電源制御のところで迷走が続いている。あろうことか、電源を独立させても、CPUがリセットしてしまうようになった。こうなったらリセットの原因を徹底的に究明しないと解決しない。(今度の回路はリチウム電池の過放電防止回路がついているが、これをバイパスさせても起きるので、これが原因ではない)。

S_pa094276

 幸い当研究所にはオシロがある。回路を元に戻し、慎重に基本的なところからCPUのVccディップを探すことにした。その結果、遂にディップを捉えることに成功した! そう、入力をACモードで受けて、倍率を上げ小電圧の差分でトリガーできるようにする方法だ。経験者には極く当たり前のことだろうが、こちらはオシロの素人である。

 ただ、捕捉できなかった原因は、1div 10ms以上の長いスキャン時間でパルスを捉えようとしていたためではないかと思う。デジタルオシロなので、短いパルスは長いスキャンでは分解能がたらなくてトリガーできなかったのではないか。

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 波形を捉えた時は嬉しかった。電源投入時のディップは鋭い下向けのパルスで差は1.5V以上、幅は60μs以上ある。4VがVccなのでVccは2.5Vまで下がり、幅もCPUをリセットさせるに十分な長さだ。電源を独立させてもリセットされたのは、この鋭いパルスで誘導電流でも流れたのか、いずれにしてもDC-DCコンバーターの立ち上がりは猛烈な突入電流が流れるようだ。

S_pa094278

 ディップを観測できてから、解決は早かった。画面の写真を載せたが、最初は、電源投入時の元のパルスで、次は電源に大容量(100μF)のコンデンサーとインダクター(22μH)のデカップリングを入れたときのもの、3枚目が、4.7μFである。これが一番浅い。実機にはこれを採用した。面白いことにコンデンサーが大きいと、ディップはなまるがかえって深くなりまずいということがわかった。これが最初、この対策をして効果がなかった理由であろう。

 この定数のCLを電源回路に入れて、めでたくソフトパワースイッチは、共通電源で実現した。いやあ、およそ一週間これにかかりきりだった。可哀そうなのは、このあいだのレギュレーターXC6202である。今度も基板に載ったけれど採用されずに低温ハンダではずされ、ジャンク箱に逆戻りした。余程運のないやつである。許せ。

S_pa094280

 残るは、いよいよGM管の外部クェンチ回路である。これでうまくいけば万々歳なのだが。

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コメント

suさん、コメントありがとうございます。

>スイッチング時の突入電流の問題
 なるほど、ゲートの立ち上がりを緩やかにすれば、スイッチングそのものも緩くなるということですね。

>検出パルスが不安定な問題
 ブログ見せていただきました。こちらはマイコンの検知数がノイズで増えるのではなく、GM管のパルスそのものが派手に増えていくという現象で、ノイズとは関係がなさそうですね。

投稿: がた老 | 2011年10月13日 (木) 00時22分

がた老様。時々拝見させていただいています。
スイッチング時の突入電流の問題は私も経験あります。私の場合、PchMOSFETのゲートとマイコン間に100kの抵抗をいれてスイッチングをソフトにしてやることで対策しました。FETの型名が分かりませんので100kでよいかどうか分かりませんが。
検出パルスが不安定な問題ですが、私もガイガーカウンターを作製したときに問題になりました。私の場合はGM管まわりの引き回しで飛び込んだノイズが原因でした。ノイズのせいで、温度とともに検出パルス数が変化してしまい厄介でした。一度ドライヤーで検出部分(GM管を除いて)を暖めたりすると現象が激しくなるような気がします。
以下参考になるかどうか分かりませんが私の場合です。
http://growingkabu.cocolog-nifty.com/homc2010/2011/09/post-4cb5.html

投稿: su | 2011年10月12日 (水) 12時47分

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