デュアルバンドの電波時計ユニットを買ってしまった
ロンドンオリンピックが終わった。感動と興奮の2週間だった。人はどんなものにでも感動することができる不思議な生物だ。出場選手と自分は、恐らく一生、何の接点も持たない関係なのだろうが、何故か日本選手ひとりひとりに感情移入してしまい、彼らの渾身のプレーに一喜一憂の寝不足の日が続いた。
サッカーはやっぱり女が強かった。ランキングから言えば銀メダルは順当な結果といえる。それより男子のベスト4など、むしろ予想に反して大活躍した方だと思う。胸を張って帰ってきて欲しい。でも、やはり女子に比べればひ弱さを感じた。飛行機のビジネスクラスとエコノミークラスの待遇の差か。スポーツはハングリーさが原点だ。
ハレの時は去って明日からはケの日常が帰ってくる。暑さに加えて不規則な寝起きを繰り返したので体調が今ひとつだ。それにしても生きていることの意味を考えさせる2週間だった。
それはそうと電子工作である。オリンピック観戦でまとまった時間がとれず、相変わらず細かい工作や実験をさみだれ式に続けている。ブログに報告するような面白い話題もない。ただ、このブログは自分の備忘録を兼ねている。あまり日をあけると記録に穴があいていしまう。まとまりはないが、この2週間の出来事をご紹介しておくことにする(8/13/2012)
小型DCモーターとギヤボックスを入手(7/30/2012)
所長は凝りだすと止まらない性質(たち)である。今度は何の変哲もない3VのDC小型モーターとギヤボックスを買ってきた(¥730 千石3号店)。夏休みの宿題の工作の手伝いをするためではない。別のたくらみがある。
娘に、例のLANによるプリンター電源コントローラーを贈呈したのはいいが、娘の新居のプリンターにはソフトパワースイッチがついていることが判明した。つまり、このプリンターは、単にコンセントの電気を入れただけではスタートしないのである。
こうなると、とことん動かすところまでやらないと気がすまないというのが所長の性分である。プリンターに手を入れて、電気的に動くように細工するのは簡単だが、何となく面白くない。 電源が入ったときにソフトパワースイッチを物理的に押し下げる装置をプリンターにつけてやろうと考えた。そのためのモーターである。
しかけは、マジックテープでプリンターに固定し、大きく減速したモーターのクランクか何かでスイッチを押下する。マジックテープなら、いらなくなればとりはずせる。問題は、ワンショットのロジックとモーターの電源である。
電源を今のコントローラーからとりだすのは、ちょっと苦しい(ACアダプターを1Aの小型のものにしてしまった)。それと、プリンターの形が苦しい。今はやりの複合機で、スイッチのところが平面でなく曲面である。しっかり止めることが難しい。
ワンショットのしかけの方は簡単だ。このあいだ買ったまま放置しているTiny13あたりで十分だろう。いや、これくらいなら、アナログのNE555あたりでも十分なはずだ。部品の点数を考えたりする。価格的にはNE555の方が安いが、部品点数なら8ピンAVRの方だろう。
まあ、まだ、本人たちが急いで欲しがっているわけではないので(プリンタがネットワーク対応にもなっていなかった)、向こうの準備が整うのを待って、少しづつ楽しみながらやっていくことにする。
それより、次のプロジェクトのテーマが決まらない。Andoroidの応用や、液晶のタッチパネルのインターフェースなど、技術的には面白そうだが、出来上がるのは市販の電子製品と競合するようなアプリケーションばかりである。
今さら、苦労してスマホやIPadに近いアプリケーションを開発しても、彼らのレベルにアマチュアが到達するのは至難の業で、苦労の甲斐がない。下手をすると自作の方がコストが高くなる。
ネットにからんだ開発も魅力的だが、今のところ、おおっと感心できる応用が見当たらない。このあいだ面白がって音声合成のアクエストークの石も手に入れたけれど、使える場所が見つからない(データを読み上げるマルチテスターなどちょっと食指が動いたけれど)。
そんなことで、メモに何度目かの候補リストを書き上げては次の目標を探している。まあ、これが面白いということもあるが。
関数電卓を買い換えた(8/3/2012)
それこそ、十何年ぶりかで手持ちの関数電卓を買い換えた。電波時計の同調回路の調整で、共振周波数の計算を度々しているうち新しいのが欲しくなった。コイルのインダクタンスが実測と想定で大きく食い違う。調べていくとインダクタンスが周波数によって変わるらしい。単純なLCメーターの計測と周波数の計算だけでは適切なコンデンサーの値が決まらないのである。
共振周波数の式は、freq=1/(2π×√(L×C))という簡単な式で、手持ちの関数電卓は、カルク機能というのがあって、変数を入れ直してシミュレーションできるのだが、式を保存できないので、一旦電源を切ると式を最初から入力し直さなければならない。
ウェブには、LとCの値を入れれば周波数を出してくれるサイトもあるけれど、その度にPCを立ち上げるのも面倒である。ちょうど良い機会なので、前から欲しかったプログラム可能な電卓に買い換えることにした。
これまで持っていた関数電卓は、カシオのfx-912esで、機能的には全く問題ない(関数の10%も使っていない)。太陽電池で電池交換が不要というのが気に入っているのだが、こうした式を保存したり、プログラムを書いて残しておいたりすることができないのが不満だった。
この関数電卓の前は、蛍光表示管のついたカシオのfx-101というのを持っていた。電子工作に凝る前に、処分してしまい、残しておかなかったことが悔やまれる。蛍光表示管が可愛らしく、XのY乗根などを計算させると表示管が目まぐるしく動き、必死になって計算している様子が目で確かめられて楽しかった。
プログラム電卓として今度買ったのは、シャープのEL-5250Fである。グラフィック電卓にも、ちょっとそそられたが、2万円以上するので、迷った結果検討対象からはずした。カシオのfx-5800の方がウェブ上では評判が良いようだが、シャープの電卓の使い勝手を知りたくて、あえて別機種にした。
アマゾンで、¥4500。3日で届いた。早速、LCの共振周波数の式と、並列合成抵抗値の式を保存する。これは楽だ。式をSAVE/LOAD出来るだけでなく、電源を入れると前の状態を覚えているのでいちいちLOADする必要もない。
それに式に数値を入れておいて、最後に残った変数を計算で求めてくれるソルバー機能(前の電卓でも出来たが操作性が悪かった)があるのでプログラムを書くまでもない。ただ、プログラミングの機能は、思ったより貧弱で、余り使う機会はなさそうだ。
電波時計ユニットは動いたが、感度が十分ではない(8/4/2012)
Aitendoの電波時計ユニット(モジュール)である。JJYシミュレーターでは動いたが、本当のJJYの受信は余り芳しくない。同調がまだ完全に出来ていないようだ。コンデンサーの値を調節して感度を上げようとするが、どうもうまく40Khzの共振周波数にならない。
そら。さんのコメントにあるように、このバーアンテナのインダクタンスは周波数で大きく変わるようだ。試しに、100pFから0.1μFまでのコンデンサーを次々に入れて、フランクリン発振回路で周波数を計測してみた。何のことはない2倍近いインダクタンスの違いが観測された。
しかも、変化が単調変化ではない。山がある。 あらためて磁性体の勉強をする。インダクタンスは、透磁率に比例するので、周波数によって透磁率が変化すれば当然、インダクタンスも変わるはずだ。
いくつかのサイトで、フェライトコアの透磁率の周波数特性の図を見つけた。しかし、すべて周波数が高くなると透磁率が下がる図ばかりで、特定のところで透磁率が山になるような図はない。参考資料が少ないのでどうもよくわからない。
そのうち、電波時計ユニットは、本当の電波の方が受信できなくなってしまった。地下室でも、サンルームに近いところは受信が出来ていたのだが、それも出来ない。原因はわからない。コンデンサーが違ったのかとも思うが、受信できたのがどのコンデンサーの組み合わせだったか思い出せない。
同じ0.01μFのコンデンサーでも測ってみるとかなり違いがある。JJYシミュレーターでは、同調周波数がかなり狂っても反応する(コンデンサーなしでも動く)ので、調整が出来ない。こんなに窓に近いところでしか受信できなければ実用性が乏しい。
そうこうするうちに、久しぶりに出た事務所でAitendoのページを開いてみたら、何と、電波時計ユニットの新製品が追加になっている!うーむ、40Khz(東日本用)だけでなく、40,60khz(西日本用)の両方を受信できるユニットもある。
電波時計については、当研究所には、壁掛け、卓上、腕時計のすべてに既に別の電波時計が稼動しているので、今どうしても必要ということでもない。アプリケーションが決まっていないので、ユニットは、今のところトランジスターでLEDを点滅させているだけである。デコードの仕掛けも作っていない(点滅を見ているだけで、ビット列がわかるようになったけど)。この先どうするか。
デュアルバンド電波時計モジュールは感度良好(8/8/2012)
そら。さんのコメントでは否定的な答をしたけれど、散々迷った挙句、結局、仕事の帰り、足はふたたびAitendoの直営店の方向に向き、デュアルバンドの電波時計ユニットを買ってきてしまった(¥950)。40Khzのシングルバンド用は、ついているフィルムコンデンサーがやけに大きいのでパスする。このコンデンサーの定数は、ウェブの情報通り472つまり4700pF、4.7nFであった。
ついでに、FM/AM受信モジュール(RDA5830)や、別のフェライトコアアンテナ、ポリバリコンなど、昔懐かしいラジオ部品のいくつかを衝動買いしてしまった。ここには懐かしいトランジスターラジオ用のIFTまである。郷愁をそそられる。
帰宅してとるものもとりあえず、デュアルバンドの電波時計ユニットをテストしてみた。これが何と極めて感度良好なのである。地上は勿論、地下の工作コーナーでも、悠々受信する。場所は、例のオカルト的高感度地域だけでなくその近辺でも、しっかりしたパルスが出ている。ただ、PCや、蛍光スタンドの近くでは、ノイズで受信が不正確になる。
何が違うのだろう。早速、フェライトコイルをはずしてみた。おやあ、インダクタンスは、4mHとシングルバンドのより6倍近くも多い。これが高感度の理由か。外見は見たところ全く変わりがない。大きさも同じだ。
デュアルバンドの基板からチップコンデンサーもはずして容量を測る。データシートによれば、チップの内部で、2つのコンデンサーを両バンド(40と60Khz)で切り替えている。ところが基板上には、3つのランドがあってチップコンが3つのっている。
とりはずしてみて3つあるわけがわかった。ひとつは60Khz用で残りの2つのランドは40Khz用、並列にして容量を細かく調整できるようになっている。実測で、2.2nFと、220pFが載って、2.42nFになっていた。インダクタンスは、シングルバンドのよりはるかに多い。LCメーターでは4mH以上ある(4090μH 150kHz)。
シングルバンドとデュアルバンドの受信性能の違いの理由を実際に確かめてみた。シングルバンドのユニットにデュアルバンドのフェライトコアとコンデンサーを載せ換えて実験してみた。全く同じように快調に受信できた。性能の差はすべてフェライトコアのアンテナの違いでユニットには関係ないことがわかった。
デュアルバンドについているアンテナは優秀で、さらに詳しく調べたところ、例の高感度地域だけでなく、地下室のほぼ全域で受信が可能であることがわかった(受信が安定するまで時間がかかるので念入りに測定していなかった)。
Aitendoで試しに買っておいた別のファライトコアのアンテナは2つともJJYは受信が出来なかった。800μHのものは、共振周波数を40Khzになるようコンデンサーを入れたが駄目。160mHという表示のあるバーアンテナは開放でも共振周波数が10Khzにならなかった。
他に、ポリバリコンとか、DSPのAM/FMチューナーチップ(RDA5320)とか不要不急の品物まで揃ってしまった。どうも良くない。これでは次のプロジェクトが迷走するばかりだ。RDA5320基板をブレッドボードに差せるように加工してみたりする。手だけは動くが、頭が働かない。
フェライトコアの周波数特性で大きな勘違い(8/12/2012)
オリンピックが佳境に入ってきて、TVの前に釘付けになってしまい、工作に手が廻らなくなった。仕事も夏休みに入って、外へ出る機会が減り、寝起きが極めて不規則である。しかも、昨日の土曜は、テニス仲間の「暑気ばらい」で公園で日中からビールをあおって(これは美味かった)、そのあとは丸々一日を無為に過ごしてしまった。
新しいことに挑戦する意欲が不足している。工作ルームに入ってもブレッドボードに作ったフランクリン発振回路で、前のフェライトコアアンテナのインダクタンスをちまちま測定しているだけだ。そのうち、重大な勘違いを発見した。
このあいだ、100pFから0.1μFまでのコンデンサーと、フェライトコアの共振周波数を測り、フェライトコアの周波数特性を調べた時、周波数が高くなるとインダクタンスが増える(透磁率が高くなる)、おかしいおかしいと言っていたのだが、これはフェライトコア自体が持っている浮遊容量を計算に入れていなかったのが原因だった。
コンデンサーの容量を少なくして行っても、共振周波数が上がらないのはインダクタンスが高くなるのではなくてコイルや配線が持っている浮遊容量が効いて来るからということに今さらながら気づいた。お馬鹿な話である。
試しにフェライトコアのコイルを開放にして発振回路に入れると、オシロは586Khzを差した。100pF近い浮遊容量があるようだ。そうだ、この浮遊容量の補正の計算の仕方はどこかで見たことがある。LCメーターの時の計算式と同じだ。
浮遊容量を計算に入れた、本当のそのときのインダクタンスLは、途中の計算は省略するとして、以下の式で表される。
L =( 1/(4×πの2乗×Cの容量))×(1/測定周波数の2乗 - 1/開放時の周波数の2乗)
浮遊容量の値まで求める必要はない。ただし、開放時の周波数の時のインダクタンスが測定時の周波数と大きく変わらないことが前提で、これが違う(かなり違うが)のであくまでも近似値である(これを考慮に入れると式は膨大な計算量になる)。
式そのものは高校の数学レベルだが、桁が多いので計算は関数電卓がないと無理だ。周波数が高くなればなるほど、浮遊容量の影響が出る。プログラム電卓でせっせと計算し、グラフにしてみた。対数目盛りのグラフはウェブにダウンロードサイトがあるのでそれを落とす。
手書きだけれど、結構、それらしい周波数特性のグラフが得られた。このグラフに合わせて、40Khzに同調させるコンデンサーの数値を計算し(14.4nF)、発振回路で確かめる。よーし、フランクリン回路ででてくる発振周波数は、41.1Khzと近いところに納まった。
これを元のシングルバンドの電波時計ユニットにセットして動かしてみた。良いぞ、今まで不調だったJJYそのものの受信に再び成功した。これまではやっぱりコンデンサーの選択が間違っていたのだ。
しかし、最初の状態に戻っただけで、窓際から少し離すと、受信はできなくなる。このフェライトコアの性能が元々低いのだろう。こんど新しく売り出された40Khz用のユニットのコアと並列のコンデンサーの容量は、4.2nFで明らかに、このフェライトコアとは違う。2種類あるようだ。
Aitendoが日をおかずに新製品を2つも出したのは、性能不足の指摘を恐れて慌ててだしたのではないかとも勘ぐってみる。まあ、60Khz用のものを無理やり40Khzにする方が悪いといえば悪いか。60Khzなら所定の性能だったのかもしれない。
ともあれ、電波時計ユニットの工作は、この程度にしておこう。アナログの勉強を大分やらせてもらったので、無駄な時間を費ってしまったという気持ちにはならない。電波時計をどう仕上げるかはこれからの課題だ。
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コメント
最近の家電製品は洗濯機やTVに至るまでメカニカルスイッチが姿を消して概ねソフトスイッチになっているので、電源の遠隔制御が難しいですね。中に手を入れない前提では行き着くところはやはりロボット的なメカニカルの仕組みなのですね。
以前研修で高校のPC教室を利用したことがありますが教卓には生徒用PCの電源遠隔制御ボタンがありました。仕組みを見ると電源ONはMagicPacketを使う一方で、OFFの方はWindows上にAgentを常駐させて制御する方式でPCならではと感じました。自分も以前使っていたプリンタは電源がメカニカルスイッチだったのでMagicPacketで電源投入するBoxを作って使って済ませていましたが(電源OFFは、どうせ印刷物を取りにプリンタの所に行くのでそのとき手動切断)、プリンタを入れ替えてソフトスイッチ型になってからは、足を運んでいます。どんなメカができるのか一寸期待もさせて戴いております。MagicPaket方式よりWeb方式の方が携帯等含めinternet経由でも使えそうで、可能性も広がりそうですね。
投稿: eNasty | 2012年8月16日 (木) 11時52分
鉄骨のビルの中なのでそれも影響していると思います。
電波時計モジュールで遊んでいますが、私も何を作ろうかそれが思いつきません。
投稿: そら。 | 2012年8月16日 (木) 07時45分
>市販の電波時計も失敗しているので
そうですか。長波帯は電波状態が安定していると思っていたのですが、そうでもないんですね。
前に受信不能になったのも、機械でなく電波伝播が原因だった
のかもしれません。
ただ、現在(15日19時)は、デュアルバンドの方は依然好調で、
工作机の上でも受信しています(方向に敏感ですが)。
投稿: がた老 | 2012年8月15日 (水) 18時52分
電波時計モジュール買いましたか。気になっちゃいますよね。
私は先週末に都内へ出かける用があったので不恰好な40kHz版を買いました。
どうもここのところ、電波状態が悪いのか製品版でも改造版でもあまりよくデコード出来ません。
市販の電波時計も失敗しているので本当に電波状態が悪いようです。
投稿: そら。 | 2012年8月15日 (水) 10時15分