RaspberryPiライブカメラの可動部を設計する
自宅外からストリーミングビデオを見ることが出来て、高まっていた気分が一気に落ち着いた。いつもの悪い癖で暫く何もする気がなくなる。長年の野望だったライブカメラという目標を曲がりなりにも達成したのだ。PCの前に向かっても脱力してやることが思い浮かばない。
それでも力を奮い立たせて、次の目標を考える。ここはやはり予定通りカメラの遠隔操縦を次のテーマにするべきだろう。カメラを遠方から、パン(左右に振る)したり、チルト(上下にあおる)させることは、これまた長い間の夢である。
モーター制御を勉強していたのも、この遠大な目的があったから始めたようなものだ。そのためにモーターは各種のステッピングモーターを揃えて準備している。気がつけば秋月の売っているステッピングモーターの殆どの機種は揃っていた。
カメラを遠方から動かせれば、RaspberryPiのライブカメラは立派な監視カメラになる。さらにズームが出来たり音声が聞けたり、現場に所定の音声(猫を叱責する声など)が出せたりすれば完璧だが、まあそこまで凝ることもないだろう(音声合成チップは用意してあるが)。
このカメラ可動部のフレームは、アクリル板から自作するつもりでいる。アクリル板の工作は、焦電型センサーの時、これも自作の温度調整付きのアクリル曲げ機でフレームを作り、ノウハウが出来ている。カメラ可動部については、前から、沢山スケッチを描いては構想を練っている。
構成は大体決まっている。パン(左右)動作は、中型のステッピングモーターをシャフトを上にしてフレームに固定し、カメラを載せた可動台座は、このシャフトに固定して左右に回転する。可動台座は浮かせるか、キャスターをつけてフレームの上を自由に動かす。モーターは強力なので直結でも大丈夫だろう。
チルト(上下)は、可動台座に載せた小型のステッピングモーターを平型ギヤで減速し、焦電型センサーと同じような機構でカメラを上下にあおることにする。手持ちのウェブカメラ(C270)には、三脚用の固定ネジはなく、ディスプレイなどにはさむだけのしかけしかないが、当面は、こちらもアクリル板にはさむだけで良いだろう。
室内専用なので、防水、防塵などについては考える必要はない。カメラがずれるようだったら、三脚用のネジをカメラにつければ良い。スケッチは10枚近くも描いただろうか。市販のライブカメラなどの構造を調べるが、似たようなデザインばかりだ。
あんまり同じものを描いていると、作る意欲がなくなってしまいそうな気がしてきたので、適当なところで切り上げることにする。何枚目かのスケッチを元に具体的に必要なパーツのリストアップに入った。
ウェブで部品を探す。高回転させるものでもないし、たいした負荷もかからないので、普通の玩具工作のギヤなどで十分なのだが、意外に選べるものが少ない。千石電商の2号店がロボット関係の部品を置いているので機会を見つけては立ち寄っているが、なかなか思うようなものは揃わなかった。
しかし、最近、近くのツクモ本店にも「ロボット王国」というロボット部品を専門に扱っているところを発見した(本館2階)。ここは千石よりロボットに特化し、置いている商品の品数も多そうだ。早速、ウェブで買いたいパーツを心積もりして、梅雨の秋葉原を訪れた。
ロボット部品は高い。ありそうな部品がない(6/25/2013)
部品がうまく揃わない。カメラのチルト部に予定しているモーターは減速するので小さいステッピングモーターですみ、モーターシャフト径も3ミリで汎用部品が多いので部品に不自由しないが、カメラを左右に振る部分(パン)に使う予定のモーターは、例の自動巻き機に使ったモーターで、シャフト径は、なんと1/4インチ、6.3ミリもある。
このシャフトと、カメラ台座を固定する部品が見つからない。自動巻き機の時には、ロッドストッパーとか、シャフトリテイナーとかいう、内径が6ミリで、6ミリネジが外に出ている部品で時計を入れる容器(コップ)とモーターシャフトを固定した。 6ミリの内径では、1/4インチのシャフトが入らなかったので、丸やすりをつけたミニリューターで無理やり穴を広げて何とか入れた。この工作を繰り返すのは避けたい、それに、この程度のネジだけでカメラ台座を固定するのは強度に不安がある。
大きな円板などを固定するつばが広がったようなものがないか探し回る。こういうやつ(図)を探しているのだが、ないのである。 何という名前なのかがわからないのでウェブで探しようがない。
ツクモに出かけた理由は、店頭でこの種の情報を得たかったこともある。これなしで、パンするモーター直結の機構は作れないわけではないが、みなあまりすっきりした形にならない。プーリーや、ホーンをシャフトにつけて、台座に固定すれば良いようなものだが、どうも美しくない。
店頭で聞いてみたが、やはり自分が考えている以上の情報は得られなかった。あきらめて残りの必要な部品を揃える。金属製のギヤは高いので、硬質プラスチックのギヤにし、シャフト、ベアリング軸受け(必要ないけれど、こういう部品が好き)などを調達した。これだけで¥3000近い。6ミリシャフトのリティナーは欠品で買えなかった。千石に寄るがここにもなし。
前にも書いたが、ロボット部品と称するパーツは皆、えーっと言うほど高い。このシャフトリティナーだって、ひとつ¥590もする。ベアリングのハウジングなど小さいのに¥2000近い(自分の買ったベアリングは日本精工製で¥280)。R/Cカーなどの部品と違って大量に売れない商品とはいえ、ちょっとしたロボットのキットが10万円以上するのは、何とかならないものか。 それはともかく、買って帰って、プラスチックギアを取り出し、シャフトに固定するイモネジのネジ穴がないことを発見して愕然となる。そうか、いくら硬質とはいえ商品として3ミリのねじ穴を開けておくわけにはいかないのだろう。迂闊だった。これは自分で開けるしかない。自分でつける分には耐久性は考えなくて良い。つけたらどうせはずさない。
制御はRaspberry直接か、ドライバーのマイコンをつけるか
可動部の工作の準備が少し進んだので、制御ソフトのほうも考え始めた。多種多様な方法が考えられるので簡単には決まらない。あれこれウェブサイトをみながら検討する。LEDチカチカくらいは、RaspberryPiは、Linuxのスクリプトで簡単に出来るようだ。
しかし、ステッピングモーターのマイクロステップ制御のようなPWMをやらせるわけにはいかない。LinuxやWindowsはリアルタイムOSではないので、PWM制御のようなことは簡単には出来ない。何でも良いから8ビットマイコンあたりを介在させるのが結局は一番簡単そうだ。
どういうやりかたが、いかにすっきり、無駄なく、効率よく出来るか、色々頭を巡らして妄想する。このあたりが電子工作の醍醐味のひとつである。モーターの制御と、人間との操作インターフェースの部分も悩ましいところだ。
ウェブを通すのでかなり大きな時間遅れが出来る。いわゆるプロポーショナルサーボ(通常のラジコンのプロポ)のようなことを実現するのは難しい。不定の時間差ができるのでかえって操縦が難しくなるだろう。昔やった、単純なON/OFFでモーターを左右に動かすだけの方が操作し易そうにも感じる。そうなると複雑なマイクロステッピング制御もいらないかもしれない。
自動巻き機と違って、全回転させるわけではないので、始点と終点の設定も課題だ。無人環境が前提なので、うまく動かない時のフェイルセーフ機構もつけておかないと事故の心配がある。モーターが止まらなくなってコードを切ってしまい、断線、ショート、発火などの最悪の事態まで考えておかなければ、冗談では終わらない。
考えることがたくさんあるし、しかも選択肢が多いので単純に決めていくのは難しい。まあ仕事ではないので、こういうのは楽しい悲鳴とでも言うのだろう。でも最近は仕事の夢を見ることが多い。多くの選択肢の中からひとつを決断し、それがうまく行ったときの快感は、やはり実際の仕事でなければ味わえないものだ。仕事の夢が多いというのは、この快感への欲求不満のあらわれとも言える。
それはとにかく、考えるのに疲れると、無性に手を動かしたくなる。何か工作をしていないと不安な性格になってしまった。困ったものである。このところRasPiを触ることが多く、ハンダごてを握る機会が少ないので不満が溜まっている。最近のこの種の不満の解消は主にDC-DCコンバーターの工作である。
DC-DCコンバーターの道草(1) HT7750は1V程度でも動く
DC-DCコンバーターは、これまで沢山、実用(あ、何かの機器に組み込むことです)として使ってきた。所長が電気工作に目覚めた少年時代には全くなかった概念の機器で、特に昇圧コンバーターは乾電池だけで高電圧のDCが使える夢のような装置である。何かと機会を見つけては使っている。
数えてみると、3VのリニアPCMプレーヤーに5VのLCDをつけるための負電圧のコンバーターから、秋月のファンクションジェネレーターの両電源、ガイガーカウンター2号機の電源、FPGAを使ったフォトフレームのTFT液晶バックライト電源など、4つも使っていた。
特にあてがなくても作る。部品数が少なく、簡単に結果が見られるので作っていて楽しい。小さなブレークアウト基板に、ちまちまとした部品をつけようと一生懸命考えている時は、何もかも忘れる。へたった乾電池ひとつで、高輝度の白色LEDが煌々と点くのを見ると、いつも感動する。
これまでこのブログに紹介していないDC-DCコンバーター自作基板も結構ある。アジア製(台湾)のHoltekのHT7750という廉価なコンバーター(秋月で5 ヶ¥200)を使った基板も随分前に作った。こいつ結構性能が良く、1Vを割る乾電池でも5V近い電圧を発生する。
オシロで見てみると、パルスが他のDC-DCコンバーターに比べれば大きいが、アナログアンプに使うものでもなく、LEDぐらいだったらこれで十分である。何しろ安いのが嬉しい。
このHT7750は、5Vで最大電流が200mA程度だが、もっと大きな電流のとれるDC-DCコンバーターチップもある。ただ、ブレッドボードではうまく動かなかったり、突然、具合が悪くなって動かない時があって結構気難しい。
一旦動かなくなると、アナログに弱い当研究所では、なかなか原因をつきとめられない。このあいだのLM2735のときもそうだった。この石は、出力9Vで1A近い出力が出せるのだが、どうも相性が悪い。
DC-DCコンバーターの道草(2) LM2735不調。3つも壊してしまった(6/26/2013) LM2735(DigiKeyで¥308)は、ストロベリーリナックスのブレークアウト基板で知り、そのあとDigiKeyで、2回にわけて計5つも買った石である。この基板そのものはFPGAのフォトフレームで使った。TFT液晶のバックライトの電源(9V)に5Vから昇圧して全く安定して動作した。
これに味を占めて、ガイガーカウンター2号機のChaneyキットの電源(9V)にも使った。DigiKeyから石を買い、データシートの推奨回路で昇圧コンバーターを作った。一個は、ガイガー管の高圧に触れて壊したが、取り替えてその後は問題なく動いている(はずだ。長期貸与中)。
さらに、これはブログにも紹介したが、この2つの成功体験を元に、006P乾電池の充電池化を目論んで、電池ごとケースにいれる工作に挑戦した。動くところまで行ったのだが、停止時の消費電流が大きすぎ、実用化は断念した。 ところが、その後、この電池の状態がおかしくなった。この電池システムは、リチウム2次電池を使っており、過放電を防止するためにリセットICとFETを使ったシャットダウン回路がついている。これが少し使っただけで、リチウム電池の電圧は規定以上あるのに出力が出なくなってしまう。
ちょうどハンダ付けに飢えていた頃だったので、LM2735を取り替えてみた。暫く動いていたが、また動かなくなってしまった。ふーむ、このシャットダウン回路が悪さをしているのかもしれない。この部分だけが快調に動いているものと違うところである。理屈はつけられないが、ここしか疑うところがない。
シャットダウン回路をとりのぞいて調べてみた。おやあ、一番最初、こわれたと思ったLM2735が生き返った。2番目の石はもう、うんともすんとも言わない(入力電圧が出力されるだけ)。LM2735の交換は、ピッチ変換基板で低温ハンダで取り替えていたので、ハンダ付けの熱が原因かもしれない。
生き返った方も規定どおり昇圧されるが、無負荷で100mA以上が流れる異常な状態でとても実用にはならない。3つめのLM2735をつけてやっと元に戻った。結局、高圧で失った最初の石と、この2つ合わせて3つもLM2735を失ったことになる。原因は良くわからない。
DC-DCコンバーターの道草(3)PT1301のテスト
DC-DCコンバーターでは、ブログに紹介していないもうひとつの基板がある。Aitendoで見つけた低電圧用のDC-DCコンバーターチップ、PT1301(¥100)を使った基板である。この石はこのあいだのペンライトで使ったストロベリーリナックスのコンバーター基板のAS1322チップとほぼ同じ性能のようで、0.8Vから3Vに昇圧できる。
3W白色LEDをたったひとつの単4電池でつけるこのペンライトが思いのほか使い勝手が良く、2台目を作ろうと、PT1301のブレークアウト基板を作り始めた(まあ、PT1301を動かすため2台目を作ることに決めたようなものだが)。
手持ちに指定のチップインダクターがなく、秋月の大ぶりのインダクターを使ったのでストロベリーリナックス基板のように薄くは出来ない。でもペンライトのケースは余裕があるので、少々部品の背が高くても十分中に収容可能だ。部品数が少ないので簡単に組みあがる。点灯してみる。全く問題なく3Vがでて、まばゆく白LEDが点った。
基板は切り出す時、一応アートワークしておくのだが、作ってみると1列小さくできた。本当はこんなことをやっていはいけないのだが、サーキュラーソーでさらに1列分切り離してブレークアウト基板を小型化し、悦に入る。なにしろ手を動かすことが目的のような工作なのでやることが完全に本末転倒している。
DC-DCコンバーターの道草(4)MC34063の0.22オーム抵抗(6/28/2013)
PT1301と同じ時に、Aitendoで買ったMC34063(¥100)である。これも目的もなく買ってあった。この石は、ウェブで色々とりあげられているNJM2360のオリジナルICであることを後から知った(NJM2360がセカンドソース)。
MC34063の推奨回路には、0.22オームという超低抵抗が入っている。これで過大電流を制限できるしかけなのだそうだ。なくても別に動作に問題はない(過大な電流が流れてもシャットダウンしないだけ)。
0.22オームのような、こんな低抵抗は通常では売っていない。どこで売っているのだろうと、ウェブを探し始めているうちにMC34063そのものを無性に動かしたくなった。この抵抗はなくてもかまわないと言われると。「へそ曲がり」の気性がまたむくむく起き上がって、どうしても抵抗を揃えて動かしたくなった。
ウェブではさすがに簡単に買えるところは見つからない。見つかっても数十円の単価のものに送料¥525では割が合わない。秋葉原駅下のラジオストアやラジオセンターあたりを探せばあるのかも知れないが、気難しい店員やおやじとの応対は気が重い(何百個も買うのならともかく)。
理想は、2012くらいのチップ抵抗だが、だめもとで久しぶりに千石の地下の部品売り場を覗いた。おお、さすがは千石である。チップ抵抗の1オーム以下はなかったが、1/2Wクラスなら、0.1オームからちゃんと標準系列の抵抗が揃っていた。
0.22と0.47Ω、それに1/8Wの1Ωを揃える。全部で¥50しない。肩の力の抜ける買い物である。感心にも、秋月で衝動買いした高性能LCRメーター(DE-5000)は、この超低抵抗をきちんと測定した。たいしたものだ(他のマルチメーターは1オーム以下は計るたびに違う)。
ブレッドボードで組んでみる。実に5台目くらいのDC-DCコンバーターの自作だ。回路もみな同じなので殆ど覚えてしまっている。簡単に組みあがった。当研究所ではブレッドボードでDC-DCコンバーターが動かなかったことは幸い一度もない。
MC34063のDC-DCコンバーターは、何事もなく、3Vの乾電池から、9V以上の電圧を出力した。念のため秋月で買ったあったNJM2360(2ヶ¥150)に差し替え、これも問題なく動くことを確めた。NJM2360の方が低電圧(2.6V)から出力できるらしいが、白LED(順電圧3.0V)ひとつくらいの負荷では、どちらも、2.4Vくらいから電圧が出る(9Vには届かないが)。
こうした、ちまちました実験は楽しいが、やはり何か実用的な目的がないと、すぐにあきてくる。そろそろ、ウェブカメラの可動部のプロジェクトに戻ろう。プラスティックギアの穴あけ用の工具も買ってきたことだし。
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