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2015年11月の1件の記事

2015年11月30日 (月)

面実装のDC-DCコンバーターの制作にはまる

 ちょうど1ヶ月ぶりのブログの更新である。前回はTiny85のソフトI2Cスレーブのソースコードを公開したのだが、今回は全く別の話題である。

 ここのブログ(ココログ)は、アクセスされたページ数は時間単位でわかるが、公開したファイルが何回ダウンロードされたかは記録されない。この数が多ければアップロードにも力が入るのだが全くわからない。コメントや、リンク先の記事などが頼りである。

 これまでに、リニアPCMプレーヤーやソフトI2Cマスター、マイクロステッピングなどのソースは結構使って頂いたようで嬉しい限りだが、今度のI2Cスレーブはどうだろうか。自信はない。

 まあ、仕事ではないので気に病む必要はないのだが、反響がないと何となく独り相撲をとっているような感じで空しいものである(ちょっと自信作だったのだけれど)。そんなこともあって、I2Cスレーブへの熱意は急速に冷めてしまった。

14pb287401  実は、この一ケ月電子工作から遠ざかっていたわけではない。むしろ、半田ごてを握っていた時間は近来になく多かった。それなのになぜブログを書かなかったのか。それは、これまでの工作とは全く関係のない工作で、しかも結果が中々でなかった。要するに「はまって」いたからである。

 I2Cスレーブの続きを期待して来られた方には申し訳ないが、以下は、この「はまった」内容の報告である。

安価な大容量DC-DCコンバーターチップFP6291を見つけた(11/2/2015)
 FP6291は、ChaNさんの最新作(パッシブストロボスコープ)に使われていたDC-DCコンバーターICである。Aitendoのサイトを覗いていたら、偶然、販売されているのを見つけた。何と2.5Aまで流せると書いてある。しかも¥50だ。破格の安さだ(LM2735などは¥200以上した)。これは買うしかないだろう。

Pb307418  Intelが出しているEdisonのブレークアウト基板は、EdisonをUSBペリフェラルも含めて安定して駆動させるのに、7.5~13.5Vの電源が必要である。リチウムバッテリー1つや、エネループなどで動かしたいため、前からDC-DCコンバーターには関心を持っていた。

 現在は、ストロベリーリナックスが販売しているDC-DCコンバーターモジュール(LMR62421)を使って長時間カメラを動かすことが出来たので、実用上はこれ以上新たにDC-DCコンバーターを作る必要はない。

 しかし、大容量出力のDC-DCコンバーターモジュールについては、実はこれまでに何度か自作し(過去のブログ参照)、ことごとく失敗している(LM2735やNJM2360)。汎用基板では思うような性能を上げることが出来ないようだ。

 もしかするとこのチップで可能になるかもしれない。早速、Aitendo直営ショップに出かけた。このところAitendoづいている。FP6291は発振周波数が高いため通常のチップより少ないインダクターが必要で、推奨定数の3.3~4.8μHが手持ちにはない。Aitendoで探すと、何と4種類も見つかった。

 さらにAitendoのウェブサイトでは、別の大電流出力と称するDC-DCコンバーターモジュール(SDB628(B6285Y))を見つけてある。これも安い。¥390だ。これも店頭で探し出してゲットしておいた。

 帰宅して、まずはこのモジュールを先にテストする。おお、こいつは、エネループ4本(5.1V)で、9V、0.45Aを楽々出力する。これならEdisonにUSBカメラを付けても十分余裕がある。値段が安いのでほかにも使いみちがありそうだ。

ブレッドボードでは性能が出ない(11/5/2015)

 こんどはFP6291をブレッドボードで組む。うーむ、2.5Aなど無理だ。エネループでは、0.35Aも流せば、9Vから7Vまで下がってしまう。インダクターを大きなトロイダルにしてもダメ。ブレッドボードだからだめなのか。

 データシートを見ると製造会社はシンセンで、どうも白髪三千丈の世界だ。2.5Aなどこんな状況では望むべくもない。値段が値段だ。さっぱりあきらめよう、などと数日前書いていたのに、今度は秋月や千石電商の地下で3.3μHのインダクターを見つけ、買ってしまった。合計7種類。やれやれ。15pb307407

 これが意外に、このリード型の一番小さいやつの成績がトップだった。性能が上がらないのは、どうも部品ではなくブレッドボードだからのようだ。ストロベリーリナックスの商品紹介のページには、DC-DCコンバーター基板は配線をコンパクトにしないと性能が出ないと書かれている。面実装にすれば所定の性能が出るのかもしれない。

 今Edisonのマザー基板に内蔵しているストロベリーリナックス製のDC-DCコンバーターモジュールでもインダクターは超小型である。それでいて、ウェブカメラのついたEdisonを楽々エネループ4本で駆動する。一時間つけっぱなしでも全く問題はない。

 面実装のコンバーターモジュールは以前、秋月の汎用SMD(面実装)基板で、Aitendoで手に入れたEMH7601というチップを使って作ったことがあるが、これは5Vまでしか昇圧できないのでEdisonの電源には使えない。しかも部品と部品の間は、UEW線でつないだ、いわば「面実装もどき」である。 P2126927

 秋月のSMD汎用基板を見ているうち、アイデアが段々生まれてきた。横や縦の溝は、ハンダブリッジでつなぎ、不要なところはルーターで削り出せば、このSOT23のチップなら直接ハンダ付けして、すべて面実装パーツで組めるような気がしてきた。考え出すと、これが止まらない。

こだわると止まらない。面実装の部品を集める(11/7/2015)
 手持ち部品をテーブルの上に揃えてみる。FP6291のデータシートのリファレンス回路図のチップセラコン20μFは手持ちにはない(50μFはあるが、少し大きすぎる)。チップ抵抗は、何とか手持ちで間に合いそうだ。

07pb077377  正確な基板の拡大図を作って、アートワークの作業を開始した。仕事の帰りまた秋葉原に寄って、秋月でこの前、売り切れていた20μFのチップセラコンを入手した。こだわると止まらなくなる。俺も好きだなあと、思わず苦笑いである。

 ミニリューターの丸やすりで、不要なパッドを削って、必要な部分だけにする。実体顕微鏡を見ながらの作業なので、あっと言う間に削り出しが進む。段々プリント配線っぽくなってきた。簡単に配線(というか)作業は完了した。思ったよりうまくできたので機嫌が良い。

 次は、線をまたがるジャンパーを裏にまわすビアの穴あけである。0.8ミリが少し大きすぎたようだ。ここは実体顕微鏡が使えないのでなかなか正確に開けることができない。これまでの機嫌がいっぺんに悪くなる(めげやすいタイプである)。

17pb307414  ビアは、この汎用の面実装基板は、裏が全面銅面なので気を付けないといけない。そうか、この裏面をグランド面に使って配線するのが賢かったかなあ。しかし、アートワークが終わっているので今さら配線は換えられない。実体顕微鏡を見ながら注意深く裏面の銅面がジャンパーと接触しないように、ここだけ先にハンダ付けをすませる。

面実装の基板で苦戦(11/9/2015)
 いよいよ部品のハンダ付けである。部品そのもののハンダ付けは造作がないのだが、苦労したのが、パッドとパッドの間のハンダブリッジによる配線である。ハンダの表面張力が結構大きく、0.3ミリほどの隙間を恣意的にブリッジをかけるのがとても難しい。予期しないときには簡単にブリッジがかかるくせに、思ったところには出来ないものである。もどかしい。

 折角ブリッジが出来ても、隣のハンダ付けをしている間にいつのまにか外れている。CRあたりならとともかく、ICチップのところは何度もハンダ付けしたくないのになかなかうまくいかない。冷汗をかきながらハンダ付けを進める。

 やっとできた。念のため配線を確認する。うはあ、配線間違いだ。インダクターをダイオードの先につないでしまっている。やれやれ、ここはスペースがなくて回り込ませることはできない。やりたくないけれどジャンパーが必要だ。UEW線で付け加える。

 もう大丈夫だ。恐る恐る電源を入れる。だめだ。入力電圧と同じ電圧しか出力に出て来ない。熱を持ったりしていないので誤配線ではなさそうだ。慎重に最初から導通テスターなどで配線を確かめて行く。

10pb207389  何度も確かめるが間違っていない。うーむ、ハンダ付けの熱でICをお釈迦にしたか、不安がよぎる。ICを取り換えようかと低温ハンダを取り出しかけた時、間違いを発見した。何と分圧抵抗を間違って逆につけていた。そりゃ出力電圧が上がらないはずだ。

 これを正しい位置に直して、めでたく面実装のDC-DCコンバーターは所定の電圧が出た。早速負荷テストに入る。おお、結構頑張っているではないか。これまでで最高の出力だ。9V出力で、20Ωの負荷をかけ、8V以上の電圧だ。3Wは(400mA)出ている。

自作のDC-DCコンバーターでEdisonがカメラまで動いたが(11/13/2015)
 いやあ嬉しい。これまで市販のDC-DCコンバーターだけでしか動かなかった、Edisonの電池駆動はこれで動きそうだ。早速、EdisonにUSBカメラをつけ、サーバーを動かす。良いぞ、画像がでた。遂に自作のコンバーターでも動いた。やっぱり、基板を小型化することが大切だったのだ。

 ちょうど床屋に行く時期だったので、このコンバーター基板をポケットに入れて、いきつけの理髪店の親父に見せて自慢する。彼はタバコの空き箱で五重塔を作ったりする趣味人で、気が合っている。素直に感心してくれた。

 30万画素のカメラなら、250mA程度、100万画素のC270なら平均で300mA(いずれもオシロに0.5Ωのシャントを入れての計測値)流れるが、この程度の電流では出力電圧は殆ど下がらない(9V設定で8.5V程度)。

 ただEdisonの操作法を殆ど忘れているのは参った。まずパスワードが違うと怒られる。おかしい。いくつか入れるがみなはねられる。面倒なので、カーネルを作り直す(reboot ota)。WiFiが初期状態にもどるのでWiFiの設定もやりなおす。

 DHCPをやめて固定アドレスにする方法も思い出せない。やっとスクリプトを見つけて直したのだが、設定したIPアドレスにならない。2回やりなおしてやっと成功した。これは本格的に自分のためのマニュアルを作っておく必要があるな。 08pb117378

 長時間テストに入る。うーん、やっぱり長時間は無理なようだ。10分くらいすると出力電圧のリップルが多くなり、それに比例してCPUが誤作動するのだろう熱を持ち始め、15分で、システムはリセットしてしまった。

 動くことは動いたが、これでは実用にはならない。ストロベリーリナックス(LMR62421)とAitendoのDC-DCコンバーター(SDB628)は1時間でも大丈夫なのに残念である。

ここまで来て撤退するのか。さらにこだわるのか(11/15/2015)
 さて、どうするか迷う。前にも書いたように、Edisonの可搬ウェブカメラは、市販のDC-DCコンバーターモジュールで既に実現している。実用的にはもう自作にこだわることはない。ただ、面実装にしたのに市販のレベルに達しなかったのが悔しい(ブレッドボードならあきらめがつくが)。

 何がいけなかったのだろう。データシートや、その中の推奨配置図などを調べる。データシートの文面には基準電圧を決めるFBの部分はなるべく他からの干渉を受けないよう最短距離で配線せよというだけで、インダクターなどへの指定はない。ただ、インダクターはICピンのなるべく近傍が良いようだ。インダクターのジャンパー線は性能低下のひとつの原因かもしれない。

 それに、せっかくこの汎用基板の裏面がベタアースなのにこれを活用していないのも気になる。ただ、もういちど作り直すのも良いが、ハンダブリッジで配線するのはICを痛めそうでなるべくやりたくない。

 このところ雨の日が多く、テニスもアスレチックジムもお休みで、地下のパソコンルームにこもる時間が増えたが、どうも手が動かない。電子工作の何か新しいテーマがあれば良いのだが、DC-DCコンバーターの失敗が尾を引いている。

 そんなとき、ふと新しいアイデアが浮かんだ。ハンダブリッジ配線の難しさを解消する方法である。ウェブでたまたま極薄の銅箔テープを使って面実装する記事を見て思いついた。銅箔で隙間を埋めるのだ。

 銅箔テープの裏には接着剤がついているので細くカットして隙間に固定すればピンセットで抑える必要もない。おお、これは我ながら妙案だ。早速、近所のホームセンターにでかけた。しかし、残念、エアコン工事用の分厚い銅箔テープはあったが、配線に使うような極薄の銅箔テープはなかった。 09pb207380

 あきらめきれず、ネットで探す。何だ、いくらでも売っている。薄さはみんな統一されて0.3mmでこれより薄いのはない。適当な(アマゾン)ところで注文をかける。やる方向が見えると、それまで憂鬱な気分がいっぺんに晴れる。早速、裏面グランドを利用した2台目のアートワークにとりかかった。現金なものである。

銅箔テープ届く。これもそう簡単ではなかったが何とか成功(11/18/2015)
 2日もしないうちに銅箔テープが届いた。アートワークも済んでいる。ミニリューターによる不要パッドの削り出しもすんだ。裏面グランドのビア(VIA)配線の前に、銅箔テープを使ったハンダブリッジがうまくできるかテストする。

 結論から言えば、銅箔の裏の接着剤はハンダの熱で簡単に無効になって、切れ端だけでは全く失敗であった。切れ端はあっという間に半田ごてに付着してしまう。しかし、ここで諦めないのが所長のしつこさである。

 前の「面実装基板もどき」のときにやった、UEW線のハンダ付けを思い出した。切れ端のUEW線ではなく、長いUEW線をピンセットで保持し、ハンダが冷えてからニッパーで不要部分を切る。この方式で銅箔をハンダ付けすれば良いのだ。

 カッターナイフで短冊形に切った銅箔テープの一部をパッドの隙間に置き(または配線したいところまでさしわたし)、ピンセットで押えながらハンダ付けをする。そのあと残りを切り取る。見事成功した。やった、やったぞ。ハンダが綺麗にパッドを横切って盛り上がった。俺は天才か。鼻が膨らむ。いやあ、こんなことで有頂天になれるのだから趣味というのは良いものである。

2台目の面実装DC-DCコンバーター完動す(11/22/2015)

 裏面のベタアースへのハンダ付けは、ハンダごての容量を心配したがその心配はなくきれいにハンダ付けが済んだ。2回目の配線なので進行が速い。大きさも形もほとんど同じ自作の面実装DC-DCコンバーターモジュール2号機が出来上がった(基板切り離しは完成後やる)。 12pb237393

 インダクターの取り回しはレイアウト上、データシート推奨図のように最短にはできなかったが、1号機のジャンパー線よりは短くなっただろう。アースがベタアースになったのが期待と言えば期待である。

 入出力のリード線をハンダ付けし(いずれはコネクターにする)、いよいよテストに入る。最初はマルチメーターを出力側につなぎ、エネループをつなぐ。全く音沙汰がない。ええー、どうした?とインダクターを押した途端、マルチメーターの電圧がOLの表示の後、10V近くを指した。

 いかん、インダクターのハンダ付けが不良である。慌てて、はんだごてを温め直し、たっぷりハンダを盛って中まで溶かす。ICではないので十分に熱を加えられる。テストに入る。よーし、大丈夫なようだ。しっかり所定の電圧が出た。半固定抵抗を廻して出力を9Vにする。

 さあ、問題のEdisonのウェブカメラの実験だ。念のため、オシロで出力電圧と、出力電流を表示させ、長時間テストに入る。Edisonが立ち上がる。USBカメラをつなぐ。消費電流はこの時点で150mAぐらいになる。ウェブにつなぐ。電流は300mAまであがった。 16pb307413

 10分経った。1号機はこのあたりからリップルが増え始めたが、今度の2号機はピクリともせず快調に動いている。大丈夫だ。20分、30分、依然として問題なく動いている。いやあ嬉しい。40分、少しリップルが出てくるようになったが、大したことはない。カメラは順調に動いている。

 1時間が経った。若干消費電流が増えてきたが、これはEdisonが熱を持ってきたためで電源のせいではない。リップルは殆ど変らない。最後まで見届けたいという気持ちもあったが、1時間以上は、市販のコンバーターでも動かしていない。もうこれで十分だろう。1時間も電池でEdisonを動かす機会もなさそうだし、このあたりで実験は終了することにしよう。

 ということで見事、2号機は1時間以上の作動に成功した。これで、がた老AVR研究所は、晴れてDC-DCコンバーターの呪縛からとけて、別の電子工作が出来るようになった。めでたし、めでたしである。

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