パソコン連動テーブルタップの修理を諦めて自作
IPadとTVセットトップボックスの競合は、回線速度を上げることで解決したようだ。ちょうど良い機会なので、TVまわりの環境を整理することにした。去年買い替えたTVは、DASDをUSBでつなぐと録画できるようになっているが、これがうまく動いていない。
使ったDASDはPCのディスクをSSD(半導体DASD)にしたときに余ったもので、アマゾンで買ったUSBアダプターにつないで、当初は動いていた。しかしそのうちエラーが頻発し始め、何度もDASDの初期化をやらされた。DASDそのものは壊れていない。
DASDの電源は、TVが稼働中の時だけ入るように、以前使っていたパソコン連動テーブルタップを使っており、これの誤動作の可能性が高かったのだが、TVでの録画にそれほど大きなニーズがなかったため、そのままになっている。せっかくなので、この原因究明をやることにした。
いじり防止のナットで締めてあって分解できない(1/30/2021)
TV棚の裏から、件のパソコン連動テーブルタップを取り出した。このタップはPCへの差し込みプラグが甘くて、足で触ると瞬断が発生し、PCがおかしくなったために取り替えたものである。触らなければ症状が出なかったので、TVに持ち込んでいた。
しかし動かしてみると、全く動かない。完全に壊れてしまっているようだ。修理するか、連動部分を自作するか、とりあえず分解してみようとタップを裏返した。おやあ、締めてあるビスが通常のビスではない。座金が6角形の、いじり、いたずら対策のための特殊ネジになっている。
こういうのを見ると目的はともかく、猛然と分解したくなるのが、物心ついて以来の所長の気質である。この種のネジ(トルクスネジ)については昔、Appleのコンピューターを分解するときに使った経験があり、いくつかドライバーも備えてある。工具箱を探る。おお、あった、あった。
早速、このサンワサプライのテーブルタップのネジに当ててみた。残念、この手持ちのドライバーでは開かない全く別のものであることがわかった。6角形の溝の空き方が完全に逆だ。わからないときのGoogle頼みである。早速調べてみる。
いやいや、昔に比べれば特殊ネジには沢山の種類があることがわかった。一番ポピュラーなのは、所長も一式持っているトルクスドライバーである。連動タップの特殊ネジは良くみるとオスメスが逆転している。Eタイプと呼ばれているようだ。
ネットのおかげで、こういう買い物には全く苦労しなくなった。定番のアマゾンで簡単に品物が見つかり発注する。念のため3本買ったが、全部で¥3000程度。工具として残るので高い買い物とは感じない。
しかし何となく納得がいかない。まだ何か少し違うような気がする。さらに検索を続ける。すると、このサイトに詳しい「ラインヘッドネジLH」タイプのような気がしてきた。電子部品やファミコンなどに良く使われているという。
そうだ、これに違いない。アマゾンに発注していたトルクスドライバーEタイプの注文を慌てて取り消し、こちらにする。あとは工具の到着を待つのみである。
無事空いた。思ったより丁寧なつくり(2/2/21)
工具が届いた。いそいそと梱包をあけ、早速、テーブルタップのネジ穴ににドライバーを当てる。おお、ぴったりかみあう。簡単に4つの止めねじが開いた。このドライバーは恐らくもうこれ以上は殆ど使わないだろうし、これだけに¥1000以上かけたのも馬鹿々々しい限りだが、なぜか素直に嬉しい。 パソコンで電源を連動させる基板は、タップの右端に、幅5センチ長さ4センチばかりの小さな基板である。特に一部が焼けたところもなく正常なように見える。基板の裏にはリレーも見える。この基板を使う気は今のところないので詳細に調べなかったが次のようなことがわかった。
- 制御機器の電源: 100VACを何らかの抵抗かコンデンサーで降圧している。トランスやスイッチング素子はない。いわゆるトランスレス電源だ。素人がいじるのは結構難しい。
- AC電源のon/off: 基板についた超小型の24V DCリレーで15Aを制御している。
- 動作の検知: シャント抵抗(R020 FS62と刻印、2つ直列)間の電位差をオペアンプ(LM358)で増幅してマイコンのコンパレーターか何かで比較しているようだ。
- 制御IC: 8ビットマイコンだと思うが、刻印(C101)からは検索できず。このほか、HT241というレギュレーターっぽいICや、ブリッジダイオードらしいICが実装されているが詳細は不明。
さて、修復である。100VACとの直接接続はやはり避けたい。となると電源はUSB用の絶縁5VACアダプターなどの流用が必要だ。電流のセンスはC/Tセンサーが魅力的だが、2つともこのスペースには入らないだろう。このタップのスペースに作りこむことは諦める。
本来の目的に戻って簡便なUSB利用のタップにする(2/5/21)
考えてみたら、もともとはTVに外付けするDASDの電源制御だ。必ずしも電流のセンスは必要ではない。都合の良いことに最近のTVは必ずUSBポートがついていて、電源を切ればマスタースイッチが入っていても切れてくれる(検証済み)。
以前に作ったUSBによる電源制御アダプターをもう一度作ることにした。SSRや、ACインレット、基板用のUSBコネクターDIP化キットなど手持ちは十分にある。ケースは昔、可愛いので用もないのに買ってあったタカチの小さめの金属ケース(MB-1)がお手ごろだ。
何年ぶりかのケース加工である。ミニサーキュラソー(丸鋸)を取り出して汎用基板をケースに入れる作業を始める。何事もなく縦横数ミリづつの基板カットに成功した。次はコッピングソー(糸鋸盤)を使ってアルミケースに電源インレットなどの大きな穴を開ける工程である。
コッピングソーの出番は、4~5年前のRaspberryPiのライブカメラ制作以来で、何かわくわくする。しかし、機械を作業棚の奥からとりだして埃を払い設置して見て、すぐ使えないことがわかった。
コッピングソーは作業面が平面でないとできないのだ。成形されているケースの一部に糸鋸を使うことは不可能である。据え付けるまでわからなかったとは、いかに作業から遠のいていたかを物語る。
しかたがないので、今度はドリルスタンドを持ち出し、昔ながらの方法、3ミリ程度の穴を連続して空ける方法に切り替える。ははは、こっちの方がもっと簡単だった。この方法は、中学生時代の真空管ラジオのアルミシャーシー加工以来の手法で、ノウハウが蓄積されている。
判断ミスが多い。3回も部品をとりはずすも完成(2/10/21)
ハンダ付けが楽しい。しかし、ちょっとケースが小さすぎて実装に苦労する。ほぼ1年半ぶりのハンダ付けだが、裸視ではもう汎用基板でも難しい。Aitendoで買った高画質映像の拡大鏡が頼りだ。ただ、この拡大鏡のレンズは焦点深度が浅く全体的に視るのは、ホーザンの立体顕微鏡の方が優るようだ。(面倒なので出していない)
それより、参ったのが、部品の取り付け時のつけ間違いである。事前にサインペンで印をつけて間違いようがないはずなのだが、実際につけてみると、何故かひとつずれている。今回の基板は小さいので1つピッチがずれただけで他の部品が入らなくなる。
汎用基板からの部品とりはずしは、表面実装に比べるとはるかに難しい。両面基板で裏側にハンダが回るとハンダ線でハンダをいくら吸い取ってもなかなかはずせない。位置決めのつもりでハンダの量を出来るだけ少なくしてあってもとれない。部品が半導体のときは特に神経を遣う。
虎の子のSSRの位置決めを2回も失敗し、泣く泣く例の低温ハンダを使って部品をはずす。結局、それ以外の部品で1回、通算3回も取り付け位置を修正して、やっとのことで小さいケースにつめこんだ。
それでも、久しぶりの工作である。何となくうきうきする。AC部もターミナルブロックや、ファストン端子などの在庫を活用して、整備性の高いレイアウトを工夫する。うむ、うまく配線できた。暫く出来栄えを鑑賞する。
配線は秋月電子のキットカタログやデータシートを参照してトランジスターをひとつ使って、念のためUSBインターフェースとSSR一次側を分離した。ここで気になったのがSSRのデータシートに入っているSSR一次側のスイッチングダイオードD1である。
ここはリレーのような誘導負荷ではなく、フォトカプラーの入力側なのでこうした逆電圧抑止のダイオードは不要のはずだが、秋月のSSRキットにも部品としてスイッチングダイオード(DAN202U)が実装されている。データシートにあるからには、何か目的があるのだろうが、どうも解せない。色々ウェブで探し回ったが答えは得られなかった。
まあ、ダイオードひとつの話なので、とりあえず組み込んでおいた。テストに入る。うむ、全く問題なくTVの始動とともにDASDの電源が入り、切れると間違いなくDASDの電源も切れた。出来上がったら棚の裏に隠れて見えなくなるのがさびしいが、とりあえずは実用的な工作がひとつ完成した。
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