CNCマシン(3)遅れていたが、遂にプリント基板初切削に成功
このところ順調に20日程度の間隔でアップしてきた記事が今回は遅れている。道草を卒業してCNCマシンの工作にやっと戻れたのに、ちょっとしたことでまた止まってしまったからだ。それでもその後やっとプリント基板の初切削に成功した。基板も動いて長年の念願がかなった。
前回のBluetoothによるUSBシリアルのワイヤレス化について(3/12/2018)
本題に移る前に、先の道草の報告をしておこう。USBシリアルデータをBluetoothで送り、CNCマシンをワイヤレスで動かす話である。
いくつかの障害を越えて、前回までにRaspberryPi Zero W(以降raspi0W)のUSBシリアルポートは、Bluetoothを通して、別のPCの仮想シリアルになった。接続の開始に少しコツがいるが、送受信とも安定して動いた。ただ、少し画面の展開が遅いのが気になる。
残るは、実機のテストである。raspi0Wの基板をCNCマシンの横に持ち込んで、USBケーブルをRaspiのホストUSBソケットに接続する。少し離れたPCではBluetoothの仮想シリアルポートをCNC制御ソフトCandle(Grblcontroller)のシリアルポートに指定する。このPCでCandleが動けばワイヤレス化は成功である。
念のため、PCのTeratermでCOMポート(com10となった)を立ち上げる。すると例の、
Grbl 0.9j['$' for help]
>
という、ArduinoのGRBLのWelcomeメッセージが出た。$などのコマンドのレスポンスも正常だ。良いぞ。次はいよいよCandleの始動である。立ち上げたあと、設定で、bluetoothのCOMポートを指定する。
うーむ、つながったような、つながっていないような。画面では、ジョグダイヤルの画面部分が黒くなり接続しているようだが、反応はない。そのうちエラーメッセージが出て、画面の制御部分がグレーになる。たまにスピンドルが回り出すが、止めることは出来ない。
こういう制御系でこの安定性ではとても危なっかしくて使えないのだが、根がしつこい性分である。あきらめきれずロジアナを持ち出して、シリアルデータをCNC2418のコントロールボードから採って調べてみた(ストロベリーリナックスがおまけにつけてくれた極小プローブが役に立った)
その結果、シリアルデータは正しくPCからここまで送られているが、Candleがレスポンスを返していない。懸念したとおり送受信の反応が遅すぎ、タイムアウトとなっている公算が強いことが分かった。
データの中継をしているRaspiでのPythonプログラムの問題である。プログラム上は単純に来たデータを送っているだけで余分なことは何一つしていない。従って、これをさらに高速化するには全く別のことを考えないといけない。残念ながらこれ以上は無理だ。ここは潔く諦めるべき時だろう。
ということで、このUSBワイヤレスプロジェクトは、これで一区切りとする。PythonとBluetooth、それにRaspiでのリダイレクトの勉強が出来ただけでも収穫だと考えよう。
PCB(プリント基板)制作の進行に戻る(3/15/2018)
MDF板の彫刻以来、止まっていたCNCマシンの工作を再開する。Easelで作ったMDF板の切削はとても順調に出来たが、こちらが主力でやろうとしている基板切削は、基板データの制作途中で止まったままだった。
基板の回路は、これまで幾多の挑戦をしてきたDC-DCコンバーター基板である。KiCADで設計データは大体できていたが、サイズが問題だった。今まで汎用の表面実装基板で作ったものより小さくすることが難しくて、そのままになっている。
久しぶりにKiCADを立ち上げ、コンバーター基板の小型化を再開する。DC-DCコンバーターは、これまで3個以上の基板制作をやってる。少なくともこれより大きくしたくない。入出力間のピン間隔が20.32ミリ(mil規格で8ピン)、全体のサイズで25X15ミリ以下が目標である。
一時的に嫌気がさして先に進まなかったのだが、時間を空けたのが良かったのだろう、何故か順調に手が動く。ほどなく目標のサイズにすることが出来た。このソフトに慣れてきたのかもしれない。配線チェック(DRC)も問題ない。最後のステップ、べたアースにして状態を見る。
あれえ、出力側のピンの周囲のべたアースがおかしい。ここはかなり部品を寄せたところだが、べたアースのパターンは前のピン位置のところを基準に描かれ、このままではショートしてしまっている。
うーむ、前の部品データが残っていて悪さをしているようだ。そう言えばピンを移動した時、パーツエディターではピンのフットプリントと形状枠がずれておかしなことになっていた。この部品(2ピンヘッダー)を一旦削除し、新しいデータを持ってきたが、事態は改善されない。
KiCADの不具合に間違いないが、今これにかかわっている時間はない。プリント基板エディターのデータをすべて消去し、回路図エディターからネットリストや部品抽出を再度やりなおし、そっくり基板エディターのデータを作り直した。
何回目かの手順なので作業が早い。すぐ基板が完成した。べたアースはどうだ。大丈夫だ。余計なものはついていない。前のデータのミスも見つけられたし(片側のピンヘッダーがmil規格でなかった)、KiCADの習得にもなった。言うことはない。そう、所長は究極のプラス思考人間である。
Gcodeを出す工程に移る。聞きしに勝る複雑な工程に四苦八苦(3/19/2018)
次はいよいよ難関のCAMデータ変換である。いやいや、これがこんなに大変とは思っていなかった。KiCADのガーバーデータ(基板情報を網羅したもの)からCNCマシンの制御コマンドGcodeに移すのは、膨大な手順が必要である。
ひとつひとつが複雑な手順で出来ているので、沢山の設定が必要なのはわかる。しかし、途中の工程が多すぎる。でも、悪戦苦闘したおかげで今までちんぷんかんぷんだった事情がだいぶ理解できるようになった。ガーバーデータなどというCAM技術用語をそれなりに駆使できるほどになったのは大したものだと自画自賛する。
面倒な理由は他にもある。KiCADからGcodeを出すには定番のルートというものがなく、多くのやり方があって何を選べば良いのかわからないことだ。素人にとっては複数の手段があることはかえって難しくする要素である。
しかし、泣き言を言ってもいられない。せっせとウェブサイトを逍遥し、一番楽そうな方法を探求する。検討の結果、FlatCAMが一番主流なようなので、これで先に進むことにする。こういうのは善悪を抜きにしてやっている人の多い道を選ぶというのが一番という「ずるい」考え方でもある。
FlatCAMの解説は色々あるが、ここあたりが一番詳しくておすすめである。こちらも詳しいが、ちょっとわかりにくい。
べたアースのGcodeが難しい(3/22/2018)
べたアースの切削がやはり最大の難関だった。境界部分の切削パスは、カッターの切削幅だけを注意していれば良いのだが、べたアースを指定すると、どこにも接続されない島が残る。この残った部分を削除する、いわゆる、べた抜き銅箔部の削除(noncopper削除)手順が思ったように働かない。
ゾーンを指定すると、その部分の島の部分を削除するパスを作ってくれるはずなのだが、ゾーンの範囲がうまく決まらず、ソフトがハング状態(ゾーンを調べまわっているのか)になったり、とんでもなく広い部分がごっそり指定されたりする。
結局、KiCADから FlatCAM、さらに CandleのGcodeまで行き来してやっと切削できそうなGcodeデータが揃った。 べた抜き銅箔は、ゾーンではなく切削パスを追加する手順がFlatCAMにあるので、これをせっせと島になった部分に書き込んで、切削データを揃える。
いやいや、一癖も二癖もあるフリーソフトである。何とか出来上がった。実際のデータをCandleに持ち込んで、エンドミルをつけない運転(カメラリハーサルか)を開始した。ふーむ、予想通り動いているようだ。
それにしてもこの熱中ぶりは自分でも驚くばかりである。難しいから面白いのか、夢中でデータをいじる。うっかりすると、エンドミルを基板深さまで打ち込んで、いきなり走り出すGcodeを吐いたりするので、油断はならない(あっという間に刃を折っておしまいになる)。
基板(PCB)の初切削は思ったより順調。しかし穴あけができない(3/25/2018)
リハーサルがうまく行ったので、本番の切削に進む。最後の工程である。基板切削なのでZ軸の補正をするheightmap機能が活躍する。切削の範囲は小さいのでheightmapのデータ収集は簡単に済んだ。
いよいよ、Vカッターを付けてPCB(プリント基板)の切削である。最初はカッターの位置をきっちり基板にあてなかったこともあり、遠慮めの切削となって銅箔を削るところまでカッターが行かなかった。
切削の深さを少し増やし、Z軸の原点をさらに近づけた2回目は、うまく行ったのだが、掲載写真の通りY軸のステッピングモーターが最後の最後で空回りし、外周の切削が基板を横切ってしまって失敗した。3回の試行でほぼ考えているような基板が削れた。スピンドルは全速ではなく60%で音は殆ど気にならない。
切り離しまで行って重大な誤りに気付く。ドリルビットに換えようと手持ちのプロクソンのミニリューターのビットをとりだしたら、何とここのシャンクサイズは3.0ミリだった。CNCマシンは3.175ミリである。3ミリのコレットチャックの持ち合わせはない。
やれやれ、このドリルビットは使えないのか。これは大誤算である。ドリルビットはこれを流用することにしていたので何の用意もしていない。あわててアマゾンで適当なドリルビットのセットを発注する。アマゾンだからすぐ着くと思っていたが送られてきた書類の到着予定日を見て目を疑った。
何と、10日以上もかかるという。アマゾンだけど販売している会社は中国だった。うーむ、注文の時に良く調べるべきだったが、もう遅い。まあ、余り慌てても仕方がないので、到着までやり残していた工作で時間をつぶすことにする。
中国からドリルビットが届くまで、他の工作で気を紛らわす(3/27/2018)
やり残している工作はいくらでもある。まず、このあいだESP8266でワイヤレス化したロボットアームの暴走抑止である。制御系の電池がへたるとアームが暴走するのを止めたい。このあいだ全てのモーターが動き出して、大騒ぎになった。
この原因はわかっている。これまで参考にさせていただいたプログラムがもともと負論理だったが、これをそのままにしたので、3V以下でも動くモータードライバーに0のデータが送られて、すべてのモーターが全開になるというオチである。
これを逆にするソフトの改修である。サーバー側の改修だけで済むはずだ。でも気持ちが悪いので、クライアント側のリモコンからもすべて負論理から正論理に換えることにする。作業は面倒なだけで単純な作業だ。
ところが動かしてみたら全く不審な動きをする。動かそうとする部分が動かなくて他のアームが動く。えー、そんな器用なことを誰がする。あらためて慎重に工程を確認した。サーバー側のESP8266のコンパイルがテスト用にだけ済んで、本番のロボットアーム基板に換装するのを忘れていたことがわかる。
やれやれ年は取るものではない。コンパイルのときは、必ず最初のメッセージなどにコンパイルの記録を残しておくという鉄則を怠った咎めが早速結果に表れた。自戒、自戒である。
次は、ブレッドボードに組んであったクライアント(リモコン側)をまともなケースに組み込む工作である。久しぶりにサーキュラーソーを持ち出して、基板の端を切り、ケースの上蓋にタクトスイッチの穴を開ける。これはこれで面白い。
電源スイッチは、最初手持ちのスライドスイッチですますつもりだったが、ウェブで小さなロッカースイッチを見つけて、急に気が変わり、Aitendoで沢山のロッカースイッチが売られているのを発見し、急遽、足を延ばして買いに行ったりした。
こういうものは実際に手に取って調べるのが一番確実だからだ。Aitendoはウィークデイだったが、前にも増して客が多い。品数も増えたようである。付近には、全く別の電子部品の小売店ができたりして町が何となく以前と雰囲気が変わってきた印象だ。
やることがなくなって、レーザーカッターの準備まで始める。お馬鹿なことに買ってあったレーザーは0.5Wの一番小さいレーザーユニットだった。慌てて5.5Wの別のユニットを注文した。$100以上する。道理で最初に払った金額が小さかったわけだ。
届いたドリルビットは初回でポッキリ。スピンドルが回っていなかった(4/8/2018)
ビットが届いた。基板に両面テープを貼り(基板カットまでしてしまったので)、マシンにセットして、以前の合わせ位置を頼りに位置決めをする。ジョグを動かして合わせるが、目視ではなかなか合わない。
リハーサルを何度も繰り返し、何とか許容範囲に納まったので、意気込んで切削開始ボタンを押す。あれ、スピンドルが回らない。えー、という間もなくドリルビットは目的地まで動いて、静かに下がって行き、リセットスイッチを押す暇もなく、たわんだところでソフトはエラーで緊急停止した。
ステッピングモーターが高負荷で止まったらしい。リセットなど押す余裕など全くなかった。真っ赤なエラーマークを解除し、祈る気持ちでZ軸を上げたが、残念ながらドリルビットは数ミリのところで折れていた。
スピンドルが回らなかった原因は、Gcodeではない。リハーサルのときに用心してモーターの回転を止めるため接続コードをはずしてあり、それを開始前に確認するのを怠った、誠に単純なチェックミスである。
まだ、ひとつも穴を開けないうちにドリルビットを失う。情けなさに何故か思わず笑いがこみあげてくる。やれやれ、あれだけ用心していたのにこのざまだ。たかだか一本¥100のビットだが、このあいだ1 万円以上入った財布を落とした時よりはるかにショックが大きかった。
それでも気を取り直し、ビットを取り替えて(0.6 -> 0.5mm)工作をすぐ再開する(俺も懲りない男である)。今度は全速でスピンドルモーターを回しながら再開。無事、穴あけに成功した。それはそうだ、穴開けといっても今度の基板はわずか6か所である。
ただ慎重になりすぎ、穴あけの深さが足らなくて全部貫通していない。基板は作業盤からはずしてしまったので、リューターで、0.5mmの貫通と、ピン穴用の1mm穴あけをやる。これで、すべての工程は終了した。当研究所の初の基板切削は、ほろ苦い出発となったが、とりあえず一段落である。
一気に実装。よーし、一番性能が良いぞ(4/9/2018)
基板切削終了のところでブログの記事にしようと思っていたのだが、部品のハンダ付けを試しに始めたところ、止まらなくなった。プリント基板は迷うことがないので次から次に進む。既に部品はビニール袋にすべて用意してあったのでなおさら止まらない。12個の部品実装はあっというまに終わった。
ここまできたら動くのを確認したい。これも我慢できない。ブレッドボードに基板を差し(これが使えるようにmilピッチにこだわった)、早速、これまでの基板とダミーロードのセメント抵抗も持ち出して実験を開始する。
あれ、電圧が一定しない。一旦上がった出力電圧は、そのまま下がってしまって電源電圧と同じになる。早速、実体顕微鏡で仔細にハンダ付けをチェックする。すぐ不良個所が見つかった。電圧調整用の半固定抵抗のピンのひとつがどうもくさい。試しにピンセットで強く押すとピンが外れた。ここをしっかり固定しなおす。
よーし、所定の電圧が出た。さあ、これからが本番だ。ダミー抵抗で負荷をかけてテスト開始。これまでの自作基板では、250mAくらいまでは良いのだが、400mAを越えると出力が9Vを維持できなくなる。(7V程度に落ちる)
さあ、こんどのやつはどうだ。うむ、250mAではこれまでのものと同様全く問題ない。400mAはどうか。やった。良いぞ。9Vに近い8.8Vで頑張っている。
市販の大容量をうたったDC-DCコンバーターでも400mAを越えると、この程度の電圧降下はあるし、自作にしては上出来である。胸を張ってブログに報告できる。
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